中国の裁判所や検察、国家安全省などが6月21日、台湾独立派による分離独立活動を処罰するための指針を発表した。

 

 ところが、なんとその指針には、台湾が中国の不可分の領土であることを前提とした上で、「台湾独立活動は、台湾海峡地域の平和と安定を著しく危うくし、『分裂罪』にあたる行為。したがって、台湾独立を目的とする組織設立や、独立計画策定行為について、被害が特に重大である場合は最高で死刑が科せられる」との、目を疑うような規定が盛り込まれていたのである。

 当然、台湾側はこの発表に猛反発。

 

 24日には頼清徳総統が記者会見し、「民主主義は犯罪ではない。専制こそが罪悪だ」と痛烈に批判。

 

 「中国には台湾人民を制裁するいかなる権限もない。ましてや越境して台湾人民を訴追する権限はない」と怒りを込めた。

 

 中国ウォッチャーが語る。

「台湾における総統選で、民主進歩党の頼総統が就任してから約1カ月が経過しますが、中国側からの威圧行為は収まるどころかエスカレートするばかり。5月23、24の両日も、中国人民解放軍による台湾周辺での大規模軍事演習が実施されました。習近平国家主席にとって『台湾独立派』とみなされる頼政権は目の上のたんこぶで、何としても早めに芽を摘んでおきたい。そのため今回の指針には、台湾独立の『分裂組織』を設立するもの、との文言を入れ、台湾当局者らさえも何かに理由をつけて根こそぎ訴追する構えを見せているんです」

 とはいえ最悪の場合、死刑に処されるという「台湾を中国から分裂させるその他の行為」の対象範囲は極めて曖昧で、いくらでも拡大解釈が出来るようになっている。

 こういった威圧行為を繰り返す中国に対し、台湾は毅然とした態度で臨んでいるものの、中国側による日本への恫喝も日増しにエスカレートしている。

「20日に都内で開かれた座談会に出席した中国の呉江浩駐日大使は、30人以上の日本の国会議員が頼総統就任式に出席したことに触れ、『これらの行為は台湾独立勢力に公然と加担するものだ。日本が中国を分裂させる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆は火の中に連れ込まれるだろう』などと発言し、会場を凍りつかせた。日本に対するこうしたけん制も、今後さらに増えることになるでしょうね」(同)

 というのも、米中対立を背景に世界が空前の半導体ブームに沸く中、日本の半導体産業に商機があるとみて、台湾の半導体関連企業が続々と日本で事業を拡大。

 

 ここ2年で日本に進出、または既存拠点を拡充した台湾の半導体関連企業は9社もあり、その1社には受託生産世界最大手として有名な台湾積体電路製造(TSMC)も含まれている。

「同社が熊本県に進出したことで、新設された工場周辺に住宅バブルが起こっていることは有名な話ですが、他メーカーの工場進出で、さらに九州での人員増強が盛んになることは間違いない。そうなれば、日本との関係もさらに深まることは必至で、中国としては、それも面白くないわけです。最盛期には50%以上あった半導体産業の世界シェアが、2019年時点でわずか10%にまで落ち込んでしまった日本としては、立て直しに必死だった。そんな中で、米中における緊張の高まりを受け、米国が最先端技術を持つ台湾企業誘致に動いたものの、皮肉なことに円安でコストが米国より安い日本に追い風が吹いた。なので、中国としてはこれ以上、台湾と日本が経済で関係を深めないよう、プレッシャーをかけ続けるしかないということなんです」(同)

 さて、中国による恫喝と、それに反発する台湾。

 

 そして日本の対応は…。