「理由は一つだけだ。日本に核汚染水を排出してほしくない。私の最終目的!自首をするつもりはない!」

 靖国神社の石柱がスプレーで「Toilet」と落書きされた事件で6月5日、落書きをしたという中国人の男がANNの取材に対し、そううそぶいた。

 男は、「福島第一原発の処理水の排出を止めるため、日本人が一番注目する靖国神社に落書きをした」と行為を正当化しているが、警視庁は現在も、器物損壊事件として捜査中。

「捜査関係者によれば、男は5月29日未明に入国。31日の夜10時ごろに犯行に及び、翌6月1日未明の便で上海へ向け出国している。そのため、最初から落書きをする動画の撮影のためだけに来日したとの見方が強まっています」(社会部記者)

 その後の報道等で、この男が中国国内のSNS上では「鉄頭」などのニックネームを持つインフルエンサーだったことが発覚。

 

 中国国内では一定の支持層はあるものの、大半のネットユーザーからはキワもの扱いされていることも分かった。

「中国でもいわゆる『暴露系』や『私人逮捕系』のインフルエンサーが急増しており、こういった輩が正義の味方を気取って様々な迷惑行為を繰り返しています。ただ、中国政府は基本、内容が共産党への批判でなければ放置状態。なので今回の件も、在外中国人に対し申し訳程度に『現地の法律・法規を遵守するよう』とのコメントを出すだけにとどまっています。結局、国内で問題を起こさなければ、ある程度容認するという中国のスタンスは、昔も今もまったく変わっていないということです」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 その背景にあるのが、中国政府による「ガス抜き」だといわれる。

 

 何かの問題で政府に批判が集中しそうになったとき、その矛先をかわすために行うというもので、近年では「ゼロコロナ対策」失敗で経済が低迷した際にも、政府によるガス抜きが行われたことはよく知られる話だ。

「渡航に関しても同様で、コロナ禍で中国政府は3年半、団体旅行の渡航制限を設けていましたが、昨年8月に突如解禁し、日本や欧米への渡航が自由になった。実はこれにもカラクリがあって、当時は海外へ出られない中国人の旅行熱が自国内へ向いていた。結果、国内の観光地に毎日数万人が殺到したことで観光公害の問題が深刻化。各地の景勝地が大混乱に陥った。そこで、日本や欧米への渡航を解禁してガス抜きをしたんです。つまり、フラストレーションを発散すべく日本に観光に来ているわけで、その先で厄介事が起こらないわけはないんです」(同)

 案の定、昨年以降、日本各地で以前にも増して中国人によるトラブルが続出。

 

 富士山への“弾丸登山”をはじめ、漫画「スラムダンク」の聖地、鎌倉では車道で撮影したりと、やりたい放題となっている。

「そんな状況の中で起こったのが、福島第一原発の処理水問題だったというわけです。そして、それに乗じて、国内にある不満を、ある意味ガス抜きしたのが今回の落書き事件だったとも考えられます。いずれにせよ、今後もこの手の輩が来日し、問題行動を起こす危険性は大いにあるということです」(同)

 はたして、広がり続ける観光公害を防ぐ方法はあるのか。課題は大きい。