親族等を名乗り「鞄を置き忘れた。お金が必要だ」などと、現金をだまし取るオレオレ詐欺に端を発した特殊詐欺も時代とともに姿形を変えてきた。

 

 そんな中で5月13日、LINEで送られてきたニセの「逮捕状」の画像を信じた30代男性が約1億円をだまし取られたという被害が報告されことは、警察関係者の間で衝撃が走ったという。

 

 社会部記者の話。

「だまされたのは、茨城県在住の38歳男性。5月7日、奈良県の警察官を名乗る男から携帯に電話があり、『逮捕状が出ている』と告げられ、その後、検察官を名乗る男が出て『捜査本部』という名前のLINEアカウントを登録するよう指示を受けた。すると、そこに送られてきたのが、何と住所などが記入された逮捕状と凍結捜査差押許可状の画像。『知らないうちに法に触れてしまったかもしれない』とそれを本物と思い込んだ男性は、犯人グループの『振り込めば無罪を証明できる』との言葉を真に受け、指定された口座に現金2000万円を振り込み、その後、数回に分けて合計9900万円を振り込んでしまったという」

 これまでにも、架空料金請求詐欺や預貯金詐欺、還付金詐欺、融資保証金詐欺等々、役所の職員や銀行協会職員等を名乗る詐欺は多く発生しており、たいがい犯人グループの中には、警察官や弁護士役を担当する人物が含まれている。

 

 しかしストレートに「逮捕状」を示し、カネを振り込ませるという大胆な手口には驚くばかりだ。

 ただ実は近年、警察や検察を名乗る詐欺被害は、全国で報告されているという。

「警察庁特殊詐欺対策本部によれば、最近多くなったのが『あなたに逮捕状が出ている』と不安を煽って警視庁の偽サイトに誘導し、個人情報や金銭を騙し取るフィッシング詐欺。多くの場合が、まず携帯電話に捜査員をかたる人物から非通知で連絡があり『あなたの口座が犯罪に悪用されている』との連絡が入る。その後、SNSでのやりとりに移行し、『逮捕状が出ているのでサイトで確認してほしい』と偽サイトに誘導。偽サイトは、入力フォームに名前や電話番号を打ち込むと、自分の氏名が記載された『逮捕状』が表示される仕組みになっていて、その後、捜査員と称する人物が電話で『調査費で数十万円振り込んでもらえれば逮捕状を取り下げられますよ』などと振込先口座を指定し、カネを振り込ませる手口です」(同)

「調査費」という名目が何を意味しているのか全く分からないが、この「資金調査」と記された項目をクリックすると、金融機関の口座番号や暗証番号を記載するフォームが現れ、入力するよう促されるという。

「多くの場合、この時点で詐欺だと気付くケースが多い。それでも昨今の劇場型詐欺は本当に手が込んでいて、演技も真に迫るものが多くなっているようです。ただ、常識的に考えて警察が非通知で連絡してくることは絶対にありえませんし、ましてや逮捕状をLINEで送ってくることなど、あるはずがない。非通知には出ない、おかしなアカウントは開かない。あとはちょっとでもおかしいと思ったら警察に電話すること。どの特殊詐欺もそうですが、相手はこちらを焦らせれば勝ちと思っているので、とにかく慌てないいことです」(同)

 それにしても、まさか「逮捕状」まで持ち出すとは…。

 

 詐欺グループと警察とのいたちごっこはまだまだ続きそうだ。