1996年に英国でクローン羊「ドリー」が誕生してから26年。

 

 現在の中国で、ペットとして可愛がっていた犬や猫などの死後、それをクローンとして蘇らせ、販売するというビジネスが広がりつつある。

 

 北京在住のジャーナリストによれば、「北京にはクローン技術を使って商業ビジネスを展開する企業は数多く存在する」というが、

 

「さすがにクローンペットを扱う企業は『生命の尊厳』という問題もあって大っぴらには宣伝できなかった。ところが、口コミであっという間に広がり、1匹数百万円という高額にもかかわらず、コロナ禍が始まるまでは、海外からの依頼も殺到していたと聞いていますからね。この国の”何でもあり”の商魂には驚かされるばかりです」(同氏)

 

 と舌を巻く。

 

 4年前から一般向けにクローンペットを作り始めた某企業の場合、その“再生”にかかる費用は犬が38万元(約580万円)、猫が25万元(約380万円)。

 

 クローン製造のためには、死後1週間以内に犬や猫の皮膚などから体細胞を採取。抽出したDNAを卵子に入れ、代理母となる犬や猫の子宮に移植するという手順がとられ、受注から引き渡しまでの目安はだいたい半年から10カ月。

 

 3年前には、北京市公安局が管理していた警察犬の中でも特に優秀なシェパード2匹の皮膚からクローン犬6匹を作り出したと発表して話題になったこともあるが、

 

「この6匹は、いずれも高い能力を示しており、DNAを採取した2匹と多くの面で類似点が確認されているそうです」(前出・ジャーナリスト)

 

 この”成功”を受け、雲南省昆明市でも同様のクローン犬を警察犬として導入したという。

 

「中国当局の関係者も『今後、優れたクローン警察犬の“大量生産”に向けて関係企業と協力していく』としていますから、クローン犬の需要がますます高まることは間違いないでしょうね」(前出・ジャーナリスト)

 

 とはいえ、当然のことながら課題も少なくない。

 

 その一つがクローン製造における成功率の低さだ。

 

 クローンの代理母は流産する割合が高いため、失敗に備えて複数の雌が必要になる。つまり、1匹を作るために、数十倍の代理母を用意する必要があるのだ。

 

 さらに、人間を除いたクローン動物については現在、世界的に明確な規制や国際的なルールが定まっていないため、各国の文化や宗教観によって、その運用方針がまちまち。

 

 そして、死んでしまったペットに代わり、クローン技術でそれを作り出す過程でも多くの命が失われてしまうリスクがあるため、『命を大切にする』という根幹が崩壊してしまう恐れもある。

 

 加えて、金さえ積めばクローンが手に入るとなれば、ペットへの愛着が薄れていくという懸念もあり、要は、そういった本質的な部分を中国のベンチャー企業がどう考えるかが、今後の課題だとされるのだが……。

 

 実は、北京の企業にはコロナ禍前、日本からの依頼も相当数あったとされるから驚く。

 

 中国をはじめ、世界におけるクローンの広がりが、我々人間と動物との、命との向き合い方に変化をもたらすのは間違いないだろう。