次世代医療基盤法(医療ビッグデータ法)改正案が、昨日審議されました。病院等から提供された医療情報を「誰だか分からないようにしたデータ(匿名加工情報)」まで加工して、医療研究や創薬開発に利活用するという仕組みです。私は6年前この法律を作った際、野党筆頭理事として修正案を出し成立させています。なので、参議院の審議では答弁にも立っています。そういう観点から、私はこの法律作成の当事者の一人だと自負しています。

 

 ただ、この法律を運用する中で、「誰だか分からないようにしたデータ」の不都合が出て来ました。医療研究、創薬開発をする際に「個人情報保護は担保しつつ、もう少しだけ情報を出してほしい」という要望がありました。それを踏まえ、今回は「『他の情報と照らし合わせないと』誰だか分からないようにしたデータ(仮名加工情報)」まで利活用可能にするものです。勿論、要件を緩和する以上、利活用する側にもこれまで以上の制限が掛かるようになります。審議会資料法案資料はそれぞれリンクを参照ください。

 

 実はこの法律、仕組みは出来上がっているのですが、あまり活用が進んでいません。実績もあまり上がっていません。私は6年前の段階から、この問題点を指摘していました。この仕組みが回るためには、カネが回る必要があります。カネを出すのはエンドユーザー(例:製薬会社)です。そのカネが医療情報を加工する業者に行き、更には医療情報を提供する事業者に行くという事になります。そのビジネスモデルの構築が弱いよな、と6年前の審議でも指摘していたら、やはりそういう事態になっています。一般論として、厚生労働省はこういう仕組みをビジネスとして回す事に好意的ではないのですが、それがマイナス面として出たよな、と私は思っています。

 

 そして、昨日、質疑に立ちました(そんなに長い映像ではないので見ていただければと)。私からは以下のような点を指摘しています。

 

● 仮名加工情報くらいまで緩和すると、超希少疾患等の方は特定できるはず。その観点から、広義の特異値が出る方については、この情報提供から外してもらう手続き(オプトアウト)を相当に慎重にやるべき。
 

● 「集団」として特異値を出す場合(風土病、特定の会社での業務に伴う疾患)について、地方自治体、会社、学校等の集団としての人権についても配慮すべき(← これは6年前も主張しました)。
 

● 医療情報を出してくれる協力事業者は国立病院機構系を始めとして公立病院がとても目立つ。要するに民間病院はメリットを感じていない。最後はエンドユーザーが払うお金が原資。この仕組みの最後の所にもっと明確に製薬会社をくっ付けるべき。
 

● 一例として、都道府県が旗を振って、その県内でこの医療ビッグデータの収集から加工、そして創薬ビジネスの誘致までを考えるのは推進すべき。その場合、加工事業者の要件が厳し過ぎるので考えてほしい。

 

 最後のポイントについては、福岡県や北九州市を念頭に置いています。現時点で医療ビッグデータを提供する医療機関は県内で限定的です。また、地方自治体の持つデータを活用するという発想があり、青森県弘前市、神奈川県逗子市が取り組んでいます(が、要するにあまりやっている自治体が少ないという事です。都道府県レベルでやっている所はゼロです)。私はこういうツールを活用しながら、医薬品産業を誘致、発展させるという発想を福岡県や北九州市に持ってほしいと思っています。地域限定型で、行政の持つデータ活用(例:定期健診)、公立病院・民間病院の関与を促しつつ、医療ビッグデータを利活用して、最終的には創薬開発の産業誘致までをセットにしたヴィジョンを描ける力はあるでしょう。高市大臣には「全国知事会、指定都市市長会に売り込みに行くべき。」という事を伝えました。爾後、内閣府担当から「考えてみます」とのお返事も頂いています。

 

 最後に討論に立っています(これも短いです)。賛成討論ではありますが、上記のような思いを纏めて提言っぽくしています。あと、何でもかんでも附帯決議でお茶を濁すな、必要なら果敢に法案修正協議をやるべし、と野党各位にハッパを掛けました。