私は福岡県選出ですが、今国会、結構詰めた議論をしているのが「乳製品の輸入」についてです。今、乳製品の過剰と減産が深刻になっています。主力の北海道のみならず、全国各地の酪農家が困っています。そういう中、今、日本は生乳ベースで13.7万トンの乳製品を輸入しています(実際には生乳を輸入できるわけではないので、バター、チーズ、脱脂粉乳、ホエイ等で輸入しています)。これはWTO協定にて、1986-88年の輸入量平均相当分の輸入機会を提供する事が求められている事(カレント・アクセス)があります。現在、国内で減産・廃業が出ている中、この生乳ベース13.7万トンの輸入は必要なのか、という議論は当然のように出て来ます。

 

 私は過去から現在に至るまでずっと通商政策・通商法を専門にしておりまして、(現場に詳しいわけではないけれども)通商法側からこのような分野には強い関心を持っています。という事で、2月2日の予算委員会で野村大臣に怒涛の押しをやっています。まず、私から「WTO協定で求められているのは、輸入機会の提供義務であって、輸入義務ではないですね?」という事をしつこく聞いています。野村大臣は鹿児島出身のため、畜産には関心がありますが、酪農にはあまり関心がありません。しかも、やり取りをしていると分かるのですが、自身が最高責任者という意識が低いです(自民党の農林インナー幹部の意識のままです)。なので、議論が行ったり来たりしていますが、「輸入義務ではない」という事は明言しました。

 

 しかし、日本は決められた13.7万トン分を全量輸入しています(事実上の輸入義務)。これは何故かと言うと、国内の需給に影響を与えないためという理由で、国が一元的に管理輸入しているからです(国家貿易)。日本の理屈は、国家貿易をしているから全量輸入しなくてはいかんのだ、というものです。これはコメも、小麦も、乳製品も同様です。しかしですね、昨今のアメリカでの物価上昇によって内外価格差が無くなってきています。実際に入札に掛けると、最近はコメも、乳製品(脱脂粉乳)も不落が連発しています。つまり何が言いたいかというと、「国内の農産品は高い。競争力がない。なので国家貿易でガチガチに管理しなくてはならない。」という世界観が変わってきているので、今の仕組みを見直したらどうか?と質問しているわけです。

 

 日本は全量輸入に自縄自縛なので、入札で不落を出した後も、アメリカには「売ってください」と言い、国内事業者には「何とか買ってください」と振り向け、何とか入札が成立するように精一杯の努力をしています。「輸入機会の提供は一度出せばよくて、一旦不落を出したら打ち切るべきではないか。」とも指摘しています。この「不落を出したら打ち切れ」の指摘は相当に農林水産省に効いているようで、昨年度末、乳製品の輸入の仕組みを少し変更しました(なお、コメについても昨年の通常国会で私がガンガンやったため、入札不落を出さないよう慎重にやっている事を窺わせます)。

 

 まあ、こんな感じの事を予算委でやったのですが、野村大臣はずっとポイント外れでした。なので、質問主意書で課題をガチガチに詰めました。答弁書では「農水省として出来れば言いたくなかった事」を概ね言っていただいています。ただ、不明確な点があったので再質問主意書を出し、先日答弁書が返ってきました。要点を纏めると、

 

● 入札不落を出した後も何回も入札をして枠を満たす努力をする必要があるのは、国家貿易品目(コメ、小麦・大麦、乳製品等)のみ。
● 国家貿易は「品質の差異を考慮」と言っているから、外国産と国産にどのような品質の違いがあるのか、と聞いたら答えず(注:答えにくいはず)。
● 「国家貿易なら全量輸入」という解釈はWTO加盟国で共有されているかについて、答える立場にない(注:日本独自の解釈である事を窺わせる)。
● 全量輸入をしなくていい「客観的に輸入が困難な場合」は、日本の事情ではなく、相手国(アメリカ)の事情を指す(注:これには驚きました)。
 

 極めてテクニカルなのですが、法的な論点整理は概ねこの辺りまでで尽きていると思います。あとは現場感を踏まえた議論を、酪農地域選出の議員に頑張ってほしいです。ただ、私も引き続きコミットしていきます。北海道の酪農地域にも行ってみようと思っています(どうも高校同級生が道東で酪農をやっているという話も聞いていますし)。