異次元の少子化対策という言葉が躍るようになって久しいです。嫌な予感がしているのが「少子化対策と子育て支援を同一視した議論が横行するのでは?」という事です。子育て支援予算を倍増したら少子化は解消するのかというと、それが解消のトレンドに機能する事は間違いありませんが、どの程度の推進力となるかは確信を持てません。国会の議論を聞いていると、予算倍増ばかり言う方は、それさえ言っていれば少子化対策をやっている体裁は整えられるという意味において、実はただの無責任なのではないかと思いたくなる事があります。

 

 という事で、最近、「あえて異次元の方向に突っ走ってみたらどういうアイデアがあり得るか」について断片的に考えてみました。いずれも大反対の方々が居られる内容です。言わずに済むのであれば私だって言いたくないのですが、ありとあらゆるツールを動員すべきという視座から「考えるヒント」として提示してみたいと思います。

 

① ライフスタイルに中立でない税制

つまりは子どもが増えると、税金をまけるという税制です(典型的なのはフランスのN分のN乗税制ですが、あれは仕組み上日本ではやれません)。このライフスタイルに中立でない税制を効果的にやるためには、「まける」ための財源が必要です。効果を出すためには累進性がシャープであり、かつ、広く恩恵を及ぼすためには「(税がマイナスになった方には払い戻す)給付付き税額控除」にまで踏み込む必要があります。したがって、所得税増税とセットです。恐らくは「独身税」という批判になると思います。

 

② 婚姻に拘らず、かつ婚外子に完全中立的な社会

婚姻の先にある「イエ社会」が嫌だから結婚しないという人が社会に一定数居られる事は事実です(現在、日本社会では結婚と出産に強い連関性があるため、結果として少子化に繋がっています)。その「イエ社会」のくびきを大いに外してしまおうという事です。法的な結婚は希望しないけど、パートナーとの間に子どもを持ちたいと思う方の歩みをこれまで以上に社会全体で支えるというイメージです。論理的帰結として、「婚外子」という概念が事実上存在しないようになるはずです。ただ、こういう発想が保守系の一部の方から激しい嫌悪感を持たれる事はよく分かっています。

 

③ 卵子・精子の老化を中高できちんと教える

性教育をタブー視するのではなく、学校教育の枠内できちんと教える事は少子化対策の中でとても大切です。国会審議で、私の質問に対して野田大臣が「毎月生理があれば子供が産めるというような間違った認識」と自身の事を振り返っておられました。正しい情報を持つだけで改善する事があります。そして、あまりお金の話ばかりしてはいけませんが、最もカネの掛からない少子化対策でしょう。

 

④ 未受精卵子の凍結

若い女性が未受精卵子を凍結保存する事を認め、将来の出産可能性を高めるという事です。今はがん患者の妊孕性を維持するための凍結保存に限定されています。若い時代、キャリアパスを追いたい方が将来的に出産する可能性を高めるための凍結保存です。倫理上の問題、医療上の問題がある事は知っています。勿論、産婦人科学会が「推奨しない」と言っている事も知っています。

 

 しつこいですが「言わずに済むなら私だって言いたくない」類の話が多いです。ただ、社会的にタブー視されてきた話にまで踏み込むくらいしないと、もうダメなのだという切迫感が背景にあります。そして、異次元とは予算増ではないだろうと思うのです。あえて用語に乗ると、予算大幅増は同次元の世界での規模拡大に過ぎないでしょう。

 

 子育て支援倍増を口にしていれば少子化対策に熱心なのである、という無責任国会議員にならないためには、こういう様々なアイデアを出していくべきだと思っています。異論・反論、大歓迎です(が、罵倒・冷笑は歓迎しません)。