福岡市の高島市長が独自の休業補償を出しました。「(市長が言及したような)100億円ではやれないのではないか。」というのと、「脱法的な受給は一定程度出るだろう。」という点は気になりますが、それは現時点で深く追っても詮無い事です。

 

 色々な背景はあるのですが、私が一番最初に思ったのは「これが可能なのは、近年の福岡市は財政が改善したから。」という事です。福岡市というと「栄えている街」という印象をお持ちの方が多いでしょうが、少し前までは財政的にはかなり悪い街でした。

 

 こういう時、私は国が定めている財政健全化指数の内、「将来負担比率」という数字に注目します。簡単に言うと、「(手当されていない累積借金)÷(1年間の稼ぎ)」の比率です。もっと簡単に言うと「自治体の図体に対する借金の重さ」です。

 

 福岡市の数字を見てみましょう。以下、(平成20年度末の数字)→(平成30年度末の数字)です。


256.4% → 123.2%

 250%超えというのは、かなり悪い方に入ります。平成20年度末時点では、政令指定都市の中でビリ集団を走っていました。それをこの10年で半分以下にまで持ってきました。この将来負担比率の改善に現れるような財政健全化もあって(それだけではありませんが)、福岡市は今回、休業補償のための「袖」が長かったという事情があります。高島市長も記者会見でその点に触れていました。

 

 その他にも、劇的にこの将来負担比率を下げた政令指定都市として、浜松市(89.9% → 0%)、大阪市(245.7% → 46.4%)等があります。浜松市は今、この将来負担比率がゼロです(なお、これは借金が無い事を意味しません。すべての借金に返すための財源の当てが具体的にあるという事です。)。そして、大阪維新の歩みを批判する方が居られますが、大阪市の数字を見れば決して口だけではない事が分かります。なお、大阪府の数字についても「288.6% → 173.8%」と、とても良いとまでは言えませんが着実な改善がなされています。

 

 ただ、今、困難に直面する各自治体の財政状況を指摘しても、事態の改善にはなりません。それぞれの自治体には、それぞれの歴史と個別事情があります。今はともかく地方自治体の「足らざる」を補わなくてはなりません。

 

 だからこそ、私は1兆円用意している「新型コロナウイルス対応地方創生臨時交付金」を個別事業への配分としている事が問題だと思います。あれは絶対に地方交付税(特別交付税)で出して、地方自治体の自由に使えるカネとすべきです。前回も書きましたが、本当に「大きなお世話」です。一方、地方交付税関連では、どうも「臨時財政対策債」の枠を追加的に渡すという策が練られているようです。臨時財政対策債は、あとで国が返済資金の面倒を見る地方の借金の事です。地方に渡すカネの使い出に制限を掛けながら、借金の枠をバラまいてどうする?と思います。

 

 今、地方に渡すカネは徹底的に色の付かないものであるべきです。各自治体の首長は(口には出しませんが)絶対にそう思っているでしょう。

 

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