先のエントリーを書いた後、今度は「(国産)お魚商品券」の話が出て来ていました。通商ルールからすると、これは和牛の何倍も筋が悪いです。多分、考案している方は通商ルールそのものを知らないのだと思いますから、どちらも「筋が悪い」という事になるのですが、何故水産品の方が遥かに筋悪なのかは知っておく必要があります。

 

 通商ルール上、「農林水産」の内、「農」は農産品特別のルールがあります。GATTウルグアイ・ラウンド(1986-1993)からそういうふうになったのですが、何故かと言うと農業の重要性、保護の高さ等から、特別のルールを設けて自由化を進める必要性があると判断されたからです。一方、「林」と「水」というのは「農」以外の分野で規律される事になりました。つまり、鉱工業品と同じ扱いです。

 

 先のエントリーで、「農」には特別のルールがある中、一般ルールの補助金協定が適用されるのかどうかという論点がある事は書きました。WTOの紛争解決で争った結果、補助金協定の「国産優遇補助金禁止」の規定が「農」にも適用される事となりました。この間、結構な法的論争が行われています。しかし、水産物(魚)については、その手の法的論争は一切存在しません。「補助金協定では国産優遇補助金は禁止されている。なので、ダメ。」、これで終わりです。争う部分が全く無く、一発アウトなのです。

 

 「お肉」と「お魚」、同じ貴重なタンパク質源だという事で同じ目線で考えたくなりますが、通商ルールにおいては非常に大きな違いがあります。「(国産)お魚商品券」を主張した人は、(どう考えてもダメそうな)「国産自動車商品券」と同じ発想をしている位置付けになるのです。つまりは「通商ルールの何たるかを全く知らない議員」という烙印が押されます。

 

 こんな事は普通に農林水産族議員をやっていれば当たり前のように知っているはずなんですけどね。何度もしつこいですけど、中川昭一さん、松岡利勝さんといった自民党の先人は本当に詳しかったです。普段から勉強しているので、入閣してすぐにカウンターパートと丁々発止やっていましたから。