【以下はFBに書いたものに加筆・修正を加えたものです】

 

 日米貿易交渉が大筋合意したそうです。9月の国連総会時には署名までする方向だそうですので、相当に突貫工事になるでしょう。合意自体が唐突感がありました。

 

 ところで、私は今回、トランプ大統領はコメで冷徹な判断をしていると見ています。報道されている限りでは、現時点でも明らかに「TPP以下」の部分が幾つかあるのですが、その内の一つがコメの無税輸入枠の削減(廃止?)でした。

 TPPでは、コメについて2つの(アメリカにとっての)成果がありました。
 

① 5万トン⇒7万トンの新規無税輸入枠を作る(SBS輸入)。
② 既存のミニマムアクセス米輸入枠の内、6万トンを加工用・中粒種の輸入とする(SBS輸入)。

 そして、①を今回、削減(廃止?)するといった交渉結果が報じられています。②はもう少し説明が必要で、日米間でこの6万トンの80%をアメリカ産とするという密約があります。その件については、既に書きました(ココ)。比較的、分かり易い密約です。


 そして、ここで重要なのは、①はカリフォルニア州産米、②はアーカンソー州産米が想定されているという事です。新規無税枠は品種制限が無く、市場の需要を反映しやすいSBS輸入で行われますから、間違いなくカリフォルニア・ローズになります。逆に②は非常に特殊な品種制限があります。TPP合意時、オバマ政権はここにアーカンソー州産米を充てるという事を考えていたとされます。アーカンソー州産米の中粒種は、食味が日本の主食用には無理です。こういうブログを見ていると、日本酒用なのかなと思います。

 

 現時点で出てきている情報からは、トランプ大統領は、①をある程度諦めて、②を取りに行っているように見えます。理由は割と単純で、「選挙」です。アメリカのコメどころは、カリフォルニア州サクラメント周辺か、アーカンソー州(+ミシシッピー州)です。カリフォルニアは民主党の金城湯池で、下院議員53名の内46名が民主党、上院議員は民主党2名です。逆にアーカンソーは、下院議員4名はすべて共和党、上院議員2名も共和党です。当然、前回大統領選挙でトランプ大統領はカリフォルニアでは大負け、アーカンソーでは楽勝でした。

 

 まず、大統領選挙という観点からはコメは大事な産品ではないという事です。そういう中、カリフォルニアに成果をあげても大統領選挙でのプラスはなく、共和党支持層の強いアーカンソーの票固めはしっかりやる、そういう発想ではないかなと見ています。

 報道されている限りでは、①の削減にトランプ政権は応じています。多分、①の削減をタマにして何か別のモノを取りに行ったのです。それは「とうもろこし」かもしれませんし、別のモノかもしれません。全体像が見えて来ると、この辺りのピースが繋がって来るでしょう。