日米通商交渉が大詰めですね。昔からずっと言っているように、「肉」が大きな焦点になっています。ただ、見ていると豚肉はそこまで盛り上がていないように見えます。TPP並みで落ち着いているかもしれません。

 最大の焦点である牛肉ですが、先日、ちょっと不思議な記事が日本農業新聞に出ました。自民党の森山国対委員長が「牛肉セーフガードをどうするかが難しい問題」と言っているそうです。正直、「え、そこ?」と首を傾げました。牛肉の関税率とか輸入量とかではなく、輸入量が増えた時の緊急措置であるセーフガードが最大の課題なの?と思いました。

 

 ここからは私の推理です。

 

 多分、最初にアメリカが主張したのは「16年後の関税撤廃」だと思います。TPPでは「16年後に9%まで下げる」ですから、それを「撤廃」にまで持っていくという事を主張したでしょう。ただ、それだと日本側は国内的に持ちません。また、TPP参加国からの再交渉要求は必至です。なので、精一杯撥ね返しているはずです。

 

 そこで、私が思ったのは「16年後に9%まで下げるというTPP合意を更に延長して25年で関税撤廃」というものでした。16年後まではTPPと同じスピードで下げ、その後、アメリカだけ削減を継続して25年で撤廃、というイメージです。勿論、この場合であっても、TPP参加国から「うちも同じようにやってくれ」と要望が来ます。ただ、16年間はアメリカもTPP参加国も条件は同じなので、TPP参加国からの再交渉要望を一時的にはかわしやすいです。例えば、「元々、TPP合意で予定されている7年後の再交渉で牛肉の関税はやろう。」くらいの説明は可能でしょう。

 

 ただ、この選択肢も国内的には怒号が飛びます。

 となると、もう一つ考えられるのは、「無税で輸入するアメリカ特別枠を作る(それ以外はTPP並み)」というものです。一定の数量だけ無税輸入するというものです。こちらだと無税輸入枠に数量のたがが嵌まりますので、影響が制限なしに拡大する事はありません。そして、この場合、国内的には「輸入牛肉への需要は一定。一部を無税で輸入しても、輸入牛肉全体の枠は増えない。なので、TPP以上の譲歩ではない。」みたいな(事実ではない)言い訳を用意するような気がします。荒唐無稽なのですが、この類の説明はTPPの時に何度も聞かされています。

 

 そうやって考えると、自民党の森山国対委員長が「牛肉セーフガードをどうするかが難しい」と発言した事が合点がいくようになります。私の推理通り、政府が今、「無税特別枠」を議論しているとすると、「その無税枠輸入をセーフガードの発動基準に入れるかどうか。」でせめぎ合っているという事で森山発言との辻褄が合います。アメリカは「無税枠はアメリカのための特別枠なんだから、それはセーフガードの発動基準からは外すべき。」と言い、日本は「無税枠であろうとも輸入は輸入。輸入が増えた時のセーフガードからアメリカ特別枠を外す事は出来ない。」と言っている、という事です。

 

 ここで重要なのは、トランプ大統領にとって重要なのは「オバマ以上」という事です。NAFTA再交渉を見ていても、これがキーワードである事がよく分かります。国内的に「自分はオバマ以上のものを取ってきた。」と誇示するためのネタが欲しいのです。TPP並みで合意するくらいなら、最初から脱退などしません。そう考えると、牛肉に関する合意の何処かに「無税」という言葉が入って来る事を至上命題にしていると思います。

 

 さて、この「無税輸入枠」の推理、当たっていたら誉めてください。