【以下はFBに書いたものを加筆、修正したものです。また、ローカルな話のように見えると思いますが、大阪都構想を始めとする全国の地方自治のあり方に繋がるテーマを扱っているつもりです。】

 統一地方選挙の内、道府県知事選挙がスタートしました。福岡県では県知事選挙、県議会議員選挙が行われます。実は、私が住む福岡県北九州市では県の存在が、他の地域に比べて強く意識されません。始まったばかりの県知事選挙について「ん?県知事?」という感じがあります。それには以下のような理由があります。

 

① 政令指定都市である。

政令指定都市とは、県並みの権限を持つ市の事で、簡単に言うと「(大体人口70万人を超えるくらいの)大きな都市」です。一般の市町村なら県がやる仕事も、政令指定都市では市がやります。なので、県行政の存在感が相対的に下がります。この政令指定都市は全国に20あります。

 

② 県庁所在地でない。

政令指定都市の中で、県庁所在地でないのは川崎市、相模原市、浜松市、堺市と北九州市の5市です。自分の住んでいる街に県庁(府庁)が無く、知事が居ない、という事はやはり影響があるでしょう。

 

③ 県庁所在地から離れている。

政令指定都市の中で、県庁所在地の都市と面していないのは、相模原市、浜松市と北九州市の3市です。お隣さんですらなく、結構県庁所在地まで行くのが遠い、という事で、どうしても遠心力が働きがちです。

 

④ NHKの放送局がある。

全国で、一つの都道府県内にNHKの放送局が複数あるのは北海道と福岡だけです(例えば浜松市には支局がありますが、あくまでも支局であり、放送局ではありません。)。したがって、NHKの放送局を有する政令指定都市は北九州だけになります。私はこれが結構影響していると思っています。大体、何らかの公的行事があれば首長が出てきて、それをNHKが報じるのですが、北九州市ではその首長はほぼ北九州市長です。他県ではどんな遠隔地であっても、一県一放送局のため知事がNHKに出てくる事が多いので意識する機会がありますが、うちは福岡放送局と対等の北九州放送局ですので、必ずしもそうならないのです。

 

 政令指定都市では、一般論として道府県の存在を意識する機会が少ないのですが、我が街では更に②~④の追加的な事情により、その傾向が強いのです。これは別に福岡県知事や福岡県庁の存在を軽んじているとかいう事ではなく、現実としてそうであるというだけです。

 

 では、そういう条件の下で、私が県知事や県議会議員の先生方に期待したい事があります。それは「徹底的な権限移譲」です。

 

 政令指定都市は「県と対等」と言われますが、事務の性質上、広域性があるため県に権限が残ります。100%「県と対等」ではありません。分かり易いもので言うと、県警、県立高校、県道、二級河川、土木・農林関係等です。それ以外にも、政治の業界に居ると、時折「え?」と思うような所で県の権限や財産に出くわす事があります。特段、法定されているわけでもなく、広域性があるとも思えないような事務を、政令指定都市たる北九州市において県が担っている事があります。また、不思議な場所に県が財産(土地を含む)を持っており、「なんで、こんな所に県が土地を持っているのだろう?」と首を傾げる事は稀ではありません。

 

 私の地方自治に対する考え方として、出来るだけ基礎自治体に権限を移譲するというものがあります。そして、上部団体たる県は「どうやっても広域性の観点から県がやらなくてはならない。」と思えるものだけに特化してほしいと思います。特に政令指定都市ではそうです。これは「補完性の原則」と言われます。出来るだけ自治体で事務をやり、国は補完する機能に徹するという原則ですが、県と政令指定都市を始めとする基礎自治体との関係でも、この「補完性の原則」を徹底してほしいという事です。

 

 そういう意味で、私は県知事、県議会議員に「県が北九州市で持っている権限、事務を、積極的にヒト、モノ、カネを含めて移譲する事に汗をかいてくれる」事を期待しています。そういう主張をする候補にはとても共感を覚えるはずなのですが、地味なネタなせいかあまり主張する人がいません。この話は、県側からすると権限、事務が減る話であり、県側からすると「自分が口を利ける範囲を狭める行為」、もっと言うと「自分の仕事を減らす行為」ですので、乗り気にならないのかもしれません。

 

 例えば、北九州市を流れる紫川。あれは二級河川なので、県知事に権限がありますが、概ね市街地を流れている部分の管理は北九州市長に移譲されています。記憶が正しければ上流と河口付近は県管理ではなかったかと思います。いずれにせよ、紫川の管理は福岡県と北九州市でぶつ切りになってます(勿論、連携していますが)。紫川の管理は(ヒト、モノ、カネ含めて)すべて市に移譲される方が様々な効率化に繋がるでしょう。他にも、この街で県が県営住宅事業をやる必要があるのかといつも思います。それぞれの地域に住宅供給事情が不要だと言っているわけでは決してありません。それらの住宅事業は市にどんどん移譲すればいいではないかという事です。

 

 繰り返しでしつこいですが、「北九州市にある県の権限や財産の内、広域性等の事情により絶対に移譲できないもの以外は、積極的に北九州市への移管を進めると訴え、実行に移す方が増えてほしい。」、これが私の思いです。全国の他の政令指定都市に在住の方で同じ思いを持たれる方は多いでしょう。