ぱちんこの合法性について、私が出した質問主意書への答弁を引用した記事を書いている方が居られます。とても光栄な事です。当時はカジノとの関係で、カジノは賭博罪の違法性阻却をしなくてはならない、ぱちんこは遊技なので賭博罪の違法性阻却は不要、という理屈が奇異に見えたので、では、その境目はどの辺りかという問題意識を持っていました。その観点からの質問主意書でした。

 

(なお、私はぱちんこをやった事がありません。この質疑をする際、実地でやってみようかなと思いましたが、徹頭徹尾法令解釈だけで勝負しようと思い、あえてやりませんでした。やってしまうと、法令解釈の感性が鈍ると思ったのです。なので、ここから書く事も「やった事が無い人間」が法令解釈のみにフォーカスしていると思ってください。)

 

 まずですね、私の質問主意書の答弁書(1回目2回目)を整理して、答弁書に出てきた言葉の定義を風営法の用語に代入すると、「まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に偶然に現金を得ようとほしがる(又はむさぼる)心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」という表現になります。「客に偶然に現金を得ようとほしがる(又はむさぼる)心をそそるおそれのある遊技」と「賭博」の境を綺麗に見出す事が出来る方はそう多くは無いでしょう。

 

 では、ここで何が「遊技」と「賭博」の違いを分けているかと言うと、射幸心の度合いです。ここだけなのです。ぱちんこが「射幸心をそそるおそれのある」状態なら風営法の規制に従えばOK、しかし、カジノは「射幸心を助長する」から違法性阻却が必要、こういう理屈です。「そそるおそれ」と「助長」については、「助長」の方が射幸心の度合いが高いというのは政府答弁で明言していました。では、「そそる」と「助長」ではどちらが射幸心が上かと聞いたら、そこは分からないという答弁でした。結構、論理が綱渡りだよなと思われませんか。

 

 私の主たる関心事項は、上記のようなものでした。そして、これらの主意書や委員会質問で得た答弁を前提にした私の主張は「ぱちんこについては、真正面から賭博と言った上で違法性を阻却する事を考えるべき。その際は遊技を規制する風営法ではなく、ぱちんこ法という業法を新規立法すべき。」というものでした。上記の政府の理屈は如何にも苦しいので、もうその方がいいと思うのです。ぱちんこ業界の中にも、そういう主張を興味深く聞いていただく方が結構居られました。

 

 なお、その際「三店方式」についても質問しています。冒頭で引用した記事を書かれた方を始め多くの関係者の方が、主意書答弁でこの部分に非常に注目された事はよく覚えています。そして、残念ながら、大半の方が答弁書の読み方を間違っていました。政府の答弁書は、官僚文学の美学がよく表れています。

 最初の質問についてのやり取りは次のようなものでした(質問答弁)。

 

(質問六)ぱちんこ屋で景品を得た後、その景品を金銭に交換している現実を政府として把握しているか。
(答弁書)客がぱちんこ屋の営業者からその営業に関し賞品の提供を受けた後、ぱちんこ屋の営業者以外の第三者に当該賞品を売却することもあると承知している。

(質問七)風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定されるぱちんこ屋は、刑法第二編第二十三章における罪の違法性を阻却する必要はないのか。
(答弁書)ぱちんこ屋については、客の射幸心をそそるおそれがあることから、風営法に基づき必要な規制が行われているところであり、当該規制の範囲内で行われる営業については、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条に規定する罪に該当しないと考えている。

 この2つの答弁を以て、「三店方式」にお墨付きを出したと読む方が多かったです。しかし、よく読んでください。少なくともこの時点ではそんな事は一言も言っていません。上記のやり取りで言っているのは、「賞品を客が第三者に売却している事は知っている」という事実の認識と、「(遊技である)ぱちんこは風営法を守っていれば合法だ。」という事だけです。ここには「三店方式」への法的評価は全くありません。つまり、質問六への答弁と質問七への答弁を繋げて読もうとしてはいけないのです。この読み方については答弁受領後、警察庁の担当室長にも確認しました。

 

 なので、私は再質問をしています(質問答弁)。実はこちらの方が重要なのです。

(再質問四)答弁書の「六について」及び「七について」に関し、客がぱちんこ屋の営業者からその営業に関し賞品の提供を受けた後、ぱちんこ屋の営業者以外の第三者に当該賞品を売却した結果、風営法に基づく必要な規制の範囲を逸脱し、それが刑法第百八十五条に規定する罪に該当する事はあり得るか。ある場合、どのような状況下でそれが起こるかを答弁ありたい。

(答弁)ぱちんこ屋の営業者以外の第三者が、ぱちんこ屋の営業者がその営業に関し客に提供した賞品を買い取ることは、直ちに風営法第二十三条第一項第二号違反となるものではないと考えている。もっとも、当該第三者が当該営業者と実質的に同一であると認められる場合には、同号違反となるほか、刑法第百八十五条に規定する罪に当たることがあると考えている。

 微妙な表現を使っています。「直ちに・・・違反となるものではない」という表現は、「直ちには」違法じゃないけど、「直ちにでなければ」違法になる可能性があるという含意があります。少なくとも「三店方式」を100%肯定しているわけではありません。こういう用語の使い方として有名なものとして、東日本大震災時の福島第一原子力発電所の事故の際、官房長官が「直ちに影響はない」と言っていた事を想起いただければと思います。

 

 しかも、ぱちんこ屋の営業者と買い取る第三者が「実質的に同一」である場合は、その買取りは風営法のみならず、刑法の賭博罪の適用があるとまで言っています。「実質的に」とは「名目的に分けてもダメ」という事を含意します。この書き方なら、単にぱちんこ屋営業者と買い取る第三者の法人形態を分けているだけではダメでしょう。実質的に切り離す事を求めていると読むべきものです。

 

 これらを合わせて考えると、三店方式については、直ちに違法ではないけれども、政府は相当に厳しい基準を持っていると見た方がいいのではないですかね。「やった事が無い人間」が紙の上で読む限りはそう読めます。勿論、「現場ではそうではない。」というご指摘はたくさん頂きました。そして、答弁書の先にある現場の話は、どれくらい警察庁がその厳しい基準を適用するかの問題であり、法令解釈の問題から離れます。

 

 この主意書を出した際、色々な御批判を頂きました。ギャンブル依存症対策に積極的な方からは「あなたのせいで完全合法化となってしまった。ふざけるな。」という趣旨のご指摘を頂きましたし、ぱちんこ業界と近しい方からは「あなたのせいで色々と難しくなった。どうしてくれる?」というご指摘を頂きました。いずれも貴重なお声だと思いました。その上で、「それくらいインパクトがあったのだな。」とそのまま受け止めさせていただきました。

 

 なお、「たかが1ページ足らずの質問書を2つ出しただけだろ?」と思う方もいるでしょうが、あの2つの主意書を出すだけで、非常に多くの時間を掛けて勉強してやりました。ちょっとだけ自慢しておくと、最近の主意書答弁のトレンドである「ご指摘の●●が何を指すのかが不明」といった逃げ答弁が一つもない事にお気付きいただけるかと。結構、大変なんです、これ(笑)。