竹田JOC会長の記者会見を見ました。

 

 「質疑応答くらい受ければいいのに。」と思いましたが、質疑応答なしとなったバタバタぶりを見ていると、何処か高い所から「質疑応答はやらせるな。」という指示が飛んだのでしょう。直感的には「官邸かな。」と思います。何となく、加計理事長の会見との対比でデジャ・ヴュ感がありました。国会で竹田氏を間近に見た事がありますが、事前の振付から離れて結構長く話をする傾向があるので、「質疑をやらせない方がいい。」と判断したのだと思います。

 大まかに言って、以下のようなものでした。

 

① 自分は稟議書にハンコを押しただけ。意思決定にも関与していない。部下を信頼していた。

② 2016年9月の外部調査チーム報告書は、「ブラック・タイディングス社との委託契約は適切。自分(竹田氏)は同社と国際陸連会長との関係を知らなかった。」とされている。

③ 同報告書では「日本法では違法性が無い。」とも認定されている。

④ 2017年初旬、フランスの要請を受けた日本の東京地検から聴取された。その後、日本の検察からは何の手続きはない。また、今般のフランス当局からの聴取に対しても自らの潔白を説明した。

 

 ①はヒドいですね。これで言い訳が立つのなら、すべての組織のトップはこれで逃れられます。決裁するというのは、責任を取るという事のはずです。私には「誰かに責任を押し付けようとしている。」としか聞こえませんでした。②については、これを言い続けないといけないんですね。論理的に考えれば、ともかく「自分は知らなかった」と言うしか逃げ道が無いのです。

 

 ③については、「日本法」と限定を付けました。そして、④で「自らの潔白を説明」という情緒的な表現にしているのは興味深いです。ここが本エントリーの本題です。③を聞いた時、「あれっ?」と思いました。

 

 実は2016年9月の外部調査チーム報告書では「ブラック・タイディングス社との委託契約は、フランス刑法との関係でも違法性が無い。」と言い切っていたはずです。それを今回の発言原稿から明確に落としたという事の意味があるはずです。

 

 既に書いていますが、日本法では民間団体間の贈賄罪は、極めて例外的な事例を除けば成立しません。また、外国公務員等への贈賄が不正競争防止法で罰せられますが、この「等」にはIOCは含まれないと解されています。なので、「日本法では違法性が無い。」というのは正しいです。しかし、現在の論点は「フランス法で違法性があるかどうか。」です。

 

 聞いていて、注意深くフランス当局を怒らせないようなモノの言い方になっています。日本法との関係では、「報告書が違法性なしと言っている。」と言い切る一方、フランス法との関係では、報告書の内容を引用する事なく、竹田氏の主張+情緒的な表現で止めています。ここに自信の無さが現れています。外部調査チームに全幅の信頼を置き、かつ疚しい所が無いのなら、「外部調査チーム報告書にあった通り、フランス法でも違法性なし。」と言い切るはずです。

 

 少しずつ本件の「出口」を探す動きが始まっているのではないかな、と思いました。その「出口」とは、勿論「引責辞任」です。