先日、米国通商代表部(USTR)が日米通商交渉について交渉開始を議会に通知しました(2015年通商法において、交渉開始90日前通知が義務。)。そして、同法上、交渉開始30日前までには、USTRのウェブサイトに交渉目的、協定締結の効果等の詳細公表が義務付けられます。12月中旬くらいになると思います。

 同規定は2015年通商法から盛り込まれたものでして、この交渉開始30日前に発表される文書ってどんなものなのかなと思って、過去の例を調べてみました。まだ、新しい規定なので過去例は「NAFTAの再交渉」のみでした(違っていたらすいません)。なお、米韓FTA再交渉は、この規定の対象になっていませんでした。

 その文書がこれです。昨年7月に公表されたものです。相当に包括的である事がご理解いただけると思います。通商法上、網羅しなくてはならない部分が決まっているので、対日本でも同様の「濃さ」の文書が出てくるのでしょう(文書公表の根拠法が同じなのですから)。日米物品貿易協定(TAG)なんて可愛いものではありません。まだ、日本では政権側のテキトーな説明に惑わされている方が多いですが、これが12月中旬にこんなものが出てきた瞬間にこの音楽が流れそうです。

 また、7月文書では若干総論的ですが、USTRは昨年11月に同文書の更新版を出しています。通商法上、議会等に対する情報のアップデートや協議が定められているので、その一環でしょう。当初の7月文書には、例えば農業の個別品目は書き込まれていませんでしたが、更新版にはアメリカがターゲットにする個別品目がガッツリと丁寧に書き込まれています。「強烈だねぇ。」という印象を受けました。

 与野党問わず現職国会議員の皆様やマスコミの皆様は、政府の説明を鵜呑みにせずこれら文書をよく研究してみた方がいいでしょう。国会議員であれば予算委員会1時間分くらいは質問が出来るでしょうし、テレビ番組であれば特集が組めます。勿論、米国との交渉で影響を受けそうな業界の方も必読です。