会計検査院の検査報告により、オリンピック関連予算が膨張していることが明らかになった、との報道がありました。それに対して、組織委員会を始めとする関係者から「そんな事はない。」という反論が来ています。

 

 検査報告(全文要旨)を読んでみると、会計検査院の出しているメッセージはちょっと違うような気がしました。少なくとも、一部報道においては、検査報告をろくに読まずに書いた記事があります。

 

 現在、「オリパラ関連予算」とされているものは、以下の2つの基準に該当するものです。

 

①大会の運営又は大会の開催機運の醸成や成功に直接資すること

②大会招致を前提に、新たに又は追加的に講ずる施策であること(実質的な施策の変更・追加を伴うものであり、単なる看板の掛け替えは認めない。)

 

 そういう基準の元で、現在、オリパラ関連予算と位置付けられた事業のリストがこれです(私の方で検査報告の中から該当部分を切り取りました。)。リンク先を見てみれば分かりますが、「オリパラと直接の関係があるとまでは言えないんじゃないかな。」というものがかなり含まれています。その便乗ぶりに驚きを隠せないものもあります。テロ対策、東京での震災対策、Wi-Fi環境整備、JICAボランティア、ゲリラ豪雨予測、クールジャパン、人権啓発・・・、すべてオリパラ「関連予算」になっています(なお、私はそれらの予算が不要だと言っているわけではありません。)。

 今起こっている事は、恐らく、オリンピック関連予算と銘打つと予算が獲得しやすいので、あちこちの省庁が便乗して関連性の薄いものまで引っ掛けて予算要求しているという事です。そして、会計検査院の裏のメッセージは「必要ならその案件そのもので予算要求しろ。オリパラに便乗するな。」という事だと理解しました。

 

 大体、どんな予算編成でも、その時々の「キーワード」というものがあります。そのキーワードに乗せると予算が付きやすいという事です。私の記憶では、平成28年度補正の時に「BREXIT対応」がキーワードでした。地方創生事業まで「BREXIT対応予算」になっていて、私から財務省に「BREXITの国民投票をした結果、日本の地方創生予算が付いたとデイヴィッド・キャメロン(国民投票時の英首相)が聞いたら仰天するよ。」と話した事があります。

 

 「オリパラ関連」もそのキーワードとして使われてきました。特に補正予算が狙われます。当初予算は結構厳しく財務省から査定されますが、補正予算は金額先にありきみたいな所が往々にしてあるので、最後は「キーワードを上手く使って予算確保」みたいなやり方が蔓延してしまうのです。その結果、こういうオリパラに便乗するような形で予算が計上されてしまうのです。

 

 会計検査院が言いたい事というのは、勿論、まずは「オリパラ予算を膨張させないようにしなさい。」という事なのですが、それと同様に、オリパラ関連とすると予算が取りやすいので便乗している各役所の思惑のせいで、オリパラ関連予算そのものが収拾が付かなくなっているので整理を付けなさい、という事だと思います。勿論、「もう、こういう形での便乗予算要求はやるなよ。」というメッセージも含まれます。

 

 こういう宿題を政府が背負った事になります。あまり揶揄したくはありませんが、この宿題返し、新担当相でやれますかね。直感的には「無理」だと思います。