さすがに、日米物品貿易協定(TAG)は「日米FTA」ではないか、という論調が出始めていますね。ただ、そう認めさせるための壁を破るのはそう簡単ではありません。散漫に議論したら、すべてコテンパンに負けます。詰将棋のようにやらないといけません。

 

 まず、臨時国会冒頭で以下の質問主意書を出しておくなりして、総理の言いたかったことを確認しておくべきでしょうね。これは発言した事ですから「何を言っているか分からないので答えられない」という逃げが打てません。最近、多いのです、こういう答弁

 

【質問案】

九月の日米首脳会談後の記者会見で、安倍総理が言及した以下の言葉は何を指しているのか。

(1) 自由貿易協定

(2) 包括的な自由貿易協定

 

 総理は「包括的な自由貿易協定ではない」と言っていますが、「分野が包括的でない」という事を最大限に膨らませて、あたかも「関税交渉の対象品目が包括的でない」かのような印象を与えています。官邸スピンドクターはかなりの知恵者であり、その手法に大半のメディア関係者は惑わされています。なので、上記のようなアホみたいな質問で基本的な事を確定していく必要があります。

 

 その後は以下のような事を一つ、一つ押さえていく必要があります。迂遠で、かつテクニカルだと思われるでしょう。しかし、官邸側は色々な逃げ道を用意しているわけですから、漏れの無い進め方をしないといけないのです。

 

(1) TAGは、GATT1条における最恵国待遇の例外となるものである事を確認する。

(2) GATT1条の最恵国待遇の例外として考えられるのは、基本的には一般的例外、安全保障例外、関税同盟及び自由貿易地域しかない事を確認する。

(3) TAGは、GATT24条8における自由貿易地域を構成するための協定である事を確認する。

(4) したがって、TAGは「関税その他の制限的通商規則がその構成地域の原産の産品の構成地域間における実質上のすべての貿易について廃止」するための協定である事を確認する。

 

 普通は上記の4つの問に対しては、すべて「そうです」となります。ここまで持って来れば、「あ、やっぱり日米FTAじゃないか。」という事が分かります。ただ、これは想像以上に大変です。相手が「(上記の問に)そうです」と言いたくないと心に決めている安倍総理、茂木大臣ですからね。なお、この2人(+塩崎前厚生労働相)は意図的に関係ない答弁をダラダラして、質問時間を浪費する事に長けている方々です。なので、精緻な議論で逃がさない事が必要です。

 

 逆に、情緒的に「(実質的に)日米FTAじゃないか」という詰め寄ったところで闘牛士に赤い布で軽くあしらわれるだけです。そういう情緒的な質問は100個やってきても痛くも痒くもありません。そして、今の国会でこの手の話を緻密に詰めていけそうなのは...、恐らく共産党でしょうね。