トランプ政権による高額関税 | 治大国若烹小鮮 おがた林太郎ブログ

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前衆議院議員おがた林太郎が、日々の思いを徒然なるままに書き綴ります。題は「大国を治むるは小鮮を烹るがごとし」と読みます。


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 トランプ政権が、鉄鋼とアルミニウムに高額関税を掛けるようです。この手の鉄鋼の問題は国会でもそれ程取り上げる人が居ませんでした。ここ数年の議事録で「鉄鋼」、「関税」で検索して、質疑者としてヒットしたのは我が盟友福島伸享さんと私だけでした。私の質疑に関するエントリーはココ、当時の鉄鋼新聞の記事はココです。

 

 アメリカの理屈は「自由で公正な貿易」でして、自由貿易では公正性は確保できない(事があるとの)前提に立ちます。一方でWTO協定の基本理念というのは、自由な貿易体制が世界全体で公正な貿易の実現に寄与するというものだと思います。この「公正性(fairness)」の考え方は、時に「アメリカの貿易赤字が増えているのは不公正だ。」という理屈に転換します。そうすると、「俺が不満なんだから、何とかしろ。」というジャイアン的な発想になってしまいます。なお、アメリカの鉄鋼連盟は非常に強く保護主義を求める団体でして、彼等のステートメントを読んでいると強烈な印象を受けます。

 

 ただ、これまではアメリカも何とか自国の取る措置とWTO協定との整合性を追求しようと最低限の努力をしてきました。アンチ・ダンピングについては、WTOのアンチ・ダンピング協定と整合的である事を証明しようとしていましたし、かつてのスーパー301条についてもGATT、WTO協定に整合的に運用する意向を示していました。

 

 WTO協定では、各国が関税について譲許表というものを約束します(この譲許表は協定の一部ですので国際条約です。)。簡単に言うと、これ以上は関税を上げる事はしませんよという上限を国際的に約束するというスタイルです。それでも譲許水準以上に上げたいのであれば、協定改正交渉をして対価を出す形でしかやれないようになっています(つまり、鉄鋼関税を上げたければ、他の品目での関税下げという対価とセットで協定改正交渉をして、それが通れば認められるという事。)。それ以外にも極めて例外的な状況においては、関税を上げても良いという規定がWTO協定には盛り込まれていますが、安全保障の例外等でして、相当に要件が厳しいです。少なくとも、今回適用できるような規定振りにはなっていません。

 

 今回のトランプ政権の高額関税については、全くそういうWTO協定のルールに配慮する気配が感じられません。「今のアメリカが置かれている状況は公正(fair)ではない。だから関税を上げる。」、これ以上の理屈は無さそうです。そして、それを説明しなくてはならないとすら思っていない可能性が高いです。ここが大きなパラダイムの転換です。無理筋でも説明しようと努力するか、もうそういう意図が無いかは大きな違いです。

 

 早速、EUはリーバイス、バーボン、ハーレー等、如何にもアメリカっぽい製品について対抗的に関税を上げると言っています。トランプ大統領は売り言葉に買い言葉で、それに応じています。正に「通商戦争」の様相です。1960年代、当時のECとアメリカとの間で「チキン戦争」と言われる激しいやり取りがありました(詳細はココ)。ECが米国産チキンに高額の可変課徴金を課したら、対抗措置として米国はライト・トラック、ブランデー等に高額関税を課したという経緯でした。今回と似ているかもしれません。

 
 日本の米国への鉄鋼の輸出はそれ程多くはありませんし、高品質の鉄鋼が主力なので、今回の措置はむしろ米国経済にマイナスに働くのではないかと思います。そういう懸念は米国議会側では共有されているようです。やってみたら、アメリカ経済の隅々でとんでもない事が起こったという可能性は結構あるかもしれないなと思います。
 
 それにしても、日本は静かですね。多分、平場で聞けば「まずは事態を見守る。問題があったらWTOの紛争解決手続きに乗せる。」、こういう言い方をすると思います。それはそれで理解しなくもありませんが、よく考えておかなくてはならないのは「WTO協定で自国(アメリカ)が約束した事に従わなくてはならないという発想にそもそも立っていない相手にどう対応するか。」という事です。「アメリカがやるならうちだって」という国が出てこない保証はありません。そうやって世界の貿易を規律するルールへの順法意識が世界中で下がってくる時、1930年代のスムート・ホーリー法(大恐慌後、アメリカの関税を大幅に上げた法律)のようにエスカレートしていかないとも限りません。
 
 「そんな事は起こらない。」と楽観的になりたくなります。ちょっと話が飛びますが、最近、第一次世界大戦の起源を解き明かす名著「Sleepwalkers」(邦題は「夢遊病者たち」)を読んでいるのですが、誰も望んでいなかった戦争に夢遊病者のように欧州諸国が吸い込まれていく姿が描かれています。気が付いたら取返しの付かない通商戦争に入っていくのではないか、そんな危機感を持ちます。

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