茂木大臣の政党支部が、選挙区内で寄附行為を行っていた事が問題になっています。かつて、外務副大臣在任中、APECロス・カボス会合に御一緒した事を思い出しました。

 

 公職選挙法の規定は次の通りです。

 

【公職選挙法(抜粋)】

(公職の候補者等の関係会社等の寄附の禁止)
第一九九条の三 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)がその役職員又は構成員である会社その他の法人又は団体は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、これらの者の氏名を表示し又はこれらの者の氏名が類推されるような方法で寄附をしてはならない。ただし、政党その他の政治団体又はその支部に対し寄附をする場合は、この限りでない。
 
 これについて、総務省は「無記名のものの配布は直ちに違反とは言えず」といった見解を出しているようです(NHKの報道はココ)。
 
 しかしですね、公職選挙法で「寄附」がどう定義されているかを見たら、かなり無理筋じゃないかなと思うのです(無理筋なので、総務省は「直ちに」という逃げ口上を入れているわけですが。)。
 
 公職選挙法には「寄附」の定義があります。
 
【公職選挙法(抜粋)】
(収入、寄附及び支出の定義)
第一七九条 (略)
2 この法律において「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいう。
 
 今回は「線香」が上がっているようですが、寄附の中には当然「金銭の供与」が入るわけです。そうすると、総務省の見解で「寄附」を「金銭の供与」に置き換える事が可能です。皆様は以下を読んでどう思われますか。
 
「一般の政党支部は、候補者などの氏名を表示したり、氏名を類推させたりする場合に限って、選挙区内の人への金銭の供与が禁止されている。」
 
 政党支部は、候補者名を表示したり、類推させなければ、選挙区内でカネを配ってもいい(ケースがある)と言っているわけです。そんなおかしな話を振りまいてはいかんよ、と思います。更には、カネだったら直ちにアウトで、線香だったら直ちにアウトとまでは言えないという理屈は成立しないでしょう。これがお咎めなしならば、今後は候補者の氏名を明らかにしないやり方で、政党支部が金銭の供与をして回る事が合法となってしまいます。
 
 そんな世の中を公職選挙法は本当に予定しているのでしょうか。少なくとも、今回の件は法律の目的に反していると思います。

【公職選挙法(抜粋)】
(この法律の目的)
第一条 この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。