地方消費税の清算基準を見直す事で、東京都は1000億円の減収という報道がありました。本件は私が国会で取り上げたネタの延長線上でして、エントリーも書いています。

 

 今、地方消費税は一旦国の方で徴収して、それを一定の清算基準に基づいて都道府県に配分しています(都道府県は更に一定の基準で市町村に配分しています。)。今の制度では大都市圏でモノを購入して、郊外の居住地で消費したとしても、その地方消費税分は大都市圏に乗ってしまうという事が背景にあります。理由としては、使っているデータが商業統計のため、実際の消費実態を把握できていないという事があります。結果として、東京、大阪、愛知等の大都市圏が受け取る地方消費税が、実際にそれらの都府県での消費に課される消費税よりも多めに出ます。逆に茨城、埼玉、千葉、神奈川、三重、滋賀、兵庫、奈良等では一人当たりの税収額の指数が悪いです。

 

 今回の見直しは、そういう商業統計みたいなものよりも、より分かり易い「人口」の要素を清算基準の中により多く盛り込もうという事です。現在、清算基準全体の17.5%が人口によるものですが、これを50%にまで上げるという事になります。結果として、東京は1000億円程度の減収になるという事です。

 

 私は原則として、この清算基準の見直しには賛成です。やはり、「消費」税ですから消費実態を的確に把握するためには、供給側データである商業統計よりも、需要サイドでより消費実態を把握しやすいデータに基づくべきです。それによって、大都市圏の周辺にある自治体の財政がより充実するのは「地方創生」の考え方にも沿うでしょう。

 

 ただ、私は一つ懸念を持っていました。「地方消費税の配分が増えた自治体に対する地方交付税が切り込まれてしまったら元も子もない。」という事です。この清算基準の見直しに積極的だったのは財務省です。何故なら、地方交付税というのは「足らざるを補う」という仕組みですので、地方消費税の増えた自治体は自主財源がその分増える以上、それらの自治体に対する地方交付税を減らす事が出来るという事になります。

 

 何故、財務省が積極的であったかと言うと、東京都が地方交付税不交付団体だからです。都道府県の中では東京都だけが不交付団体です。東京都は1000億円減収となっても、国はそれを地方交付税で補う必要がありません(地方交付税増の要因ではない。)。そして、道府県の増収分だけ地方交付税を切ってしまえば、東京都の減収で地方交付税の財源を代替する事になってしまうだけだからです。それでは増収となる道府県側にあまりメリットが無いでしょう。例えば、地方交付税が1000億円切りこまれてしまうと、プラマイゼロになってしまいます。

 

(注:なお、東京都以外で不交付団体でないけども、今回の清算基準見直しで減収となる府県(愛知、大阪等)は、その減収分を交付税で補ったりするのかなという疑問は残りますが、今回の経緯から見て殆どやらないような気がします。実際に愛知県知事や大阪府知事は清算基準の見直しに反対していました(補ってくれるのであれば反対しない。)。)

 

 なので、清算基準の見直しが決まった後、来年度予算で地方交付税がどの程度切り込まれるのかに注目していました。結果は今年度より500億円減でした。勿論、地方交付税の決まり方はとても複雑ですので、この地方消費税の話だけで判断できるわけではありません。ただ、清算基準の見直しで減収となる分を地方交付税で面倒を見ないと仮定すると、減収となる東京や大都市圏等から出てくる1000億+α円-500億円(地方交付税の減少分)で、増収となる道府県全体では500億円+α分は実入りが増えるという事になります。そして、国費から出るお金は500億円減となります。ちょっと下品でかつ単純化した言い方をすると、東京や大都市圏等から1000+α億円出させて、それを国との地方とで分けたみたいなイメージです(勿論、そんなに簡単に決まっていない事はよく知っています。)。

 

 都道府県レベルでは東京都だけですが、市町村レベルになってくると政令指定都市では川崎市(のみ)、我が福岡県でも苅田町などがあり、全国で75団体あります。特徴的なのは「大都市圏」、「工場の多い所」、「原子力発電所のある所」といった感じでしょうか。これらの不交付団体について、今回の地方消費税の清算基準の見直しによる得喪については、所在する道府県の事情によって異なるだろうなと思います。今回、地方消費税増収が見込まれる道府県にある不交付団体については、当該の道府県に割り振られる地方消費税が増加するのであればプラス要因となる事もあるかもしれません(神奈川が増収となる結果として川崎市が増収になるとすれば違和感がありますが)。他方、東京、愛知、大阪にある不交付団体のように明らかに都府県に割り振られる地方消費税減が見込まれるのであればマイナス要因です。したがって、所在する道府県全体の状況によって左右されるので、「不交付団体だから損をする。」とまでは一概には言えないように思います。

 

 書いてみて整理不足の所が多く、専門性の高い方からするととても雑なエントリーになりました。言いたかったのは、東京を始めとする大都市圏から地方消費税をそれ以外の自治体に振り向けるので得をする自治体が増えるという程簡単なものではなく、地方交付税の水準次第ではすべて相殺されるおそれがあった、だけども今回の地方交付税の決定を見ていると、まあ、穏当な所に収まったという事です。