与党議員の質問時間を増やしたい、という話があるようです。これは「そうかもしれんな。」と思う部分もあれば、「官邸からの指示だろうな。」と思う部分もあります。この是非については、一概に言えない所があります。少し仕分けをしないといけません。

 

 まず、一般論として、与党議員による質問が殆ど意味を成さないのが「法案審議」関係です。与党内事前審査で腹一杯意見を言って、それで調整を付けており、かつ、与党内の機関決定をしているので、質問するとしても法律をなぞるくらいしかやる事が無いのです。聞いていても、「この法律の意義は?」みたいな「与党内事前審査をやっておいて今更、何を聞いているのだ?」と思いたくなるような質問が多いです。実際には「(一旦与野党間で時間の割り振りをやった後)与党の質問時間はやらないから、早く審議を終わらせて採決してほしい。」と理事会で頼まれる事もあります(つまり、与党2対野党8で時間を割り振った後、与党分の2の時間を放棄する事。)。

 

 逆に、与党議員でもやりたいと思うのは、テーマを絞らないかたちでの質疑です。閣僚の所信に対する質疑や、法案審議の間に挟まれてくる一般質疑です。こちらは委員会の所管事項であれば何を聞いてもいいので、与党議員でも普段から疑問に思っている事を聞きたいという気持ちはあるでしょう。野党でも「法案審議での時間は要らないけど、一般質疑の時はやらせてほしい。」という要望は結構来ます。

 

 そして、所信質疑や一般質疑における与党議員の質問のクオリティについては、これは議員によって千差万別ですが、時折「おっ」と思うものもあります。例えば、現在政府の取り組みが薄いものに対する政策提言をする質問の時は面白いです(特に公明党の方は面白いテーマを見つけてこられる事が多々ありました。)。なので、普段からどの程度勉強しているのかによって、与党議員でも有意義な内容になる事はあります。ただ、政府の方針に真っ向から反する事は言い難いので、総じてちょっと口はぼったいものが多いように感じます。私も与党時代、海賊テロ特別委員会で「シー・シェパードは国連海洋法条約上の海賊じゃないのか?」みたいな質問をしていますが、条約マフィア的な詰め倒し方は控えるように事前に言われたのを覚えています。

 

 そして、きっと官邸が一番、野党議員の質問時間を抑え込みたいのは予算委員会でしょう。総理や閣僚にとって最も辛いのがこの予算委員会です。ここは花形ですが、現在、与党議員は殆ど質問時間が回ってきません。ただ、他委員会に比して注目度が高いので、与党議員、特に自民党議員の質問は形式的なものが多かったように思います。総理や閣僚に政策の披露をさせるための場のようにも見えました(一部、河野太郎議員のように対閣僚でも容赦ない方も居ましたが。)。もっと言うと、「ほめ殺し大会」や「野党議員の指摘を打ち消すための場の提供」のように見える事もありました。

 

 全体として見ると、与党議員の希望としては「もう少し出番が欲しい。」というのが最大の理由だろうと思います。地元でアピールするために、何でもいいから出番が欲しいということなのだろうと思います。決してそれを否定するつもりはありません。ただ、「ほめ殺し大会」のオンパレードになるのであれば、国会論戦が低調化します。

 

 本件は、政策的に与党としての縛りをどの程度掛けるかという問題と絡むのです。「政府の政策批判(に繋がりそうなもの)はダメだ。」、「法案には賛成の立場からのみ質疑をしろ。」、この2つの縛りが強過ぎると、どんなに与党議員に質問時間を出しても、そのクオリティにはかなりの限界があるでしょう。しっかり勉強している方はそれでもヒット作を出せると思いますが、そうでない方には結果として「出番作り」のみが目的として残る事になります。そうならないための仕掛けとセットである事が、与党議員による国会質疑を有意義なものとするための条件となるでしょう。

 

 国会には、その他にも本会議であったり、議員立法であったり、色々なバラエティの質問の形態がありますが、大体がこんな感じです。なお、最後に言っておきますが、私は野党議員の質問のクオリティを「是」としているわけではないという前提でこのエントリーを書いています。