【要旨】
北朝鮮による弾道ミサイルは、我が国の排他的経済水域における「主権的権利」を侵害したのではないかと質問。答弁は「今回、妥当な考慮は払われなかった。」というものであったが、主権的権利の侵害とまでは明言せず。
 
【本文】
 先日、安保委員会、外務委員会で質疑に立ちました。その際、北朝鮮による弾道ミサイルの話について質問しました。
 
 弾道ミサイルは、我が国の排他的経済水域(EEZ)に落ちたという事で、私から「日本の主権的権利が害されたのではないか?」という問をしています。これは国際法上の解釈としてとても興味深い所なので説明します。
 
 国連海洋法条約上、EEZにおいては、沿岸国は「主権的権利」を有する事になっています。
 
【国連海洋法条約第56条(抜粋)】
第56条 排他的経済水域における沿岸国の権利、管轄権及び義務
1 沿岸国は、排他的経済水域において、次のものを有する。
a.海底の上部水域並びに海底及びその下の天然資源(生物資源であるか非生物資源であるかを問わない。)の探査、開発、保存及び管理のための主権的権利並びに排他的経済水域における経済的な目的で行われる探査及び開発のためのその他の活動(海水、海流及び風からのエネルギーの生産等)に関する主権的権利
(略)
 
 この主権的権利は英語では「sovereign right」という言葉を使います。これは「主権(sovereignty)」とは異なります。主権は領海内で認められるもので、EEZで主権行使は出来ません。では、主権的権利が何なのかという事については、実は必ずしも明確ではありません。ただ、そういう主権的権利を持っている事は国際法上保障されています。
 
 という事は、そういう主権的権利を持っている場所に弾道ミサイルを落とす行為は「主権的権利の侵害ではないか?」という問が出てくるのは当然と言えば当然です。
 
 岸田外相の答弁は、「国連海洋法条約上、日本の権利及び義務に妥当な考慮が払われるのであれば、他国がEEZで軍事訓練をする事は認められている。そして、今回の弾道ミサイルについてはその妥当な考慮は払われなかった。」という趣旨でした。
 
【国連海洋法条約第58条(抜粋)】
第58条 排他的経済水域における他の国の権利及び義務
(略)
3 いずれの国も、排他的経済水域においてこの条約により自国の権利を行使し及び自国の義務を履行するに当たり、沿岸国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとし、また、この部の規定に反しない限り、この条約及び国際法の他の規則に従って沿岸国が制定する法令を遵守する。
 
 なので、もう少し追って「妥当な考慮が払われなかった事を以て、主権的権利が害されたのではないか。」と質問しましたが、結局、そこについて岸田外相からは「それは難しい議論。いずれにせよ、重要なのは『妥当な考慮』が払われなかった事。」というラインを超えるものはありませんでした。
 
 なかなか答弁しにくい問なんだろうなと思いました。そこは理解しました。なお、この質問中に某党議員から「言葉遊びだ。」というヤジが飛びました。「日本の主権的権利が害されているのかどうか。」という問の何処が「言葉遊び」なのかなと首を傾げました。