【要旨】

 放課後等デイサービスは、施設設置の要件が緩いため不正事案が増えてきている。今後、見直しを進めるべき。また、就労支援A型についても見直しが行われる見通し。


【本文】
 地元である福祉関係の事業者とお話をしていたら「放課後等デイサービス」の問題点についてご指摘がありました。「制度の本義とはかけ離れた事例が散見されるので、問題意識をもってほしい。」との話でした。厚生労働省にお話を伺いました。

 

 制度はこういう感じです。障害児が学校が終わった後、適切な支援を受けられるようにするための施設です。保護者のレスパイトにも繋がる所があるでしょう。現状はこういう感じでして、制度が設けられてから爆発的に増えています。現在、障害児支援の予算の65%はこの放課後等デイサービスに充てられています。

 

 しかし、不正事案が出てきているようです。不正請求や適切なサービスを提供していない施設がかなり居るという事は厚生労働省は十分に把握していました。実際、昨年、悪質なケースについては指導が入っています。

 

 たしかに、もう一度この資料をよく見てみると、児童発達支援管理責任者1名配置、障害児10人に対して指導員を2名配置すればいいだけです。児童発達支援管理責任者については、成人の障害者支援をやっている方であればOKだそうでして、児童発達支援の知見があまり無い方がやっているケースも少なくないとの事。また、指導員についても要件は殆ど無いに等しいとの事でした。

 

 とすると、最も極端なケースとしては、例えば、15時くらいまで成人の障害者支援に携わっていた方が、夕方には放課後等デイサービスで児童発達支援管理責任者をやり、あとはバイト2名を配置しておけば、この施設は運営出来ることになります(実際に厚生労働省に確認しました。)。そして、基本報酬は受け入れる児童の障害の度合いによって異なるものの、平均して1名の障害児につき7000-8000円くらいでしょう。

 

 そうすると、月22日サービス提供をするとして、国費で160万前後の収入があります。上記のように人件費やサービス費を抑え込むと相当な利益を生み出す事になります。実際、「放課後等デイサービス」開業をサポートするセミナーでは、「月の経費60万円で利益100万円」みたいな謳い文句の所があるそうです(これは噂話で聞いただけでしたが、サイトを見ていると年間売上2640万円、年間営業利益:1100万円という事例を見ました。この数字だけで何らかの判断をすることはしたくありませんが、正直、驚きました。)。

 

 これであれば、施設数が増えていくはずです。再度、この資料を見てみましょう。事業者の過半数は営利企業です。これだけ儲かるのであれば、それは営利企業がどんどん入ってくることは確実です。制度が供給を促していると言っていいでしょう。その中で、上記で指摘したように「ただ、寝かせているだけ」、「ただ、テレビを見せているだけ」といった事業者が出てくるという事になります。

 

 さすがに、厚生労働省も見直しに迫られています。「多くの事業者の参入を促すために要件を緩くし過ぎた。」という反省があるようです。そして、こういう方向性を出しています。きちんと配置しなくてはならない人員を明確にする事やガイドラインの順守が書かれています。私からは「もう一度、制度の目的をはっきりさせ、その中でどういうサービスを提供しなくてはならないかを明確化すべき。」と厚生労働省にお伝えしました。概ね同じような改革方向を検討しているようでした。

 

 なお、この方向性資料をよく見ていただければ分かりますが、厚生労働省はこの「放課後等デイサービス」と併せて、「就労支援A型」が取り上げられています。この2つがサービスが急激に増えていて、それに応じて不適切な事例が増えているそうです。就労支援A型については稿を改めたいと思いますが、「見直し案」で書かれている事は衝撃的な厳しさです。

 

 「放課後等デイサービス」も、「就労支援A型」も適正に運営される限りはどんどんと奨励されるべきものです。本当はこういう内容のブログを書くのは本意ではないし、「障害者行政に冷たいヤツ」と言われるのかもしれません。しかし、不正な施設が一部に跋扈するがあまり、きちんとした施設までが悪者扱いされてはならないという事で、今後、関心を持ってやっていきたいと思います。