自衛隊の日報、森友学園における協議記録、この2つに共通している事が一つあります。それは「行政文書の1年未満の廃棄」です。以下、財務省のケースについて述べていきます(が、防衛省も基本的に同じです。)。

 

 実は「1年未満で廃棄していい」と書いてある法律や規則は一つもありません。公文書管理法財務省文書管理規則の何処を見ても、1年未満で廃棄して良いという規定は出て来ません。

 

 では、何故、そんな事が可能なのか、という事になります。それは意外な所にあります。公文書管理法を踏まえ、内閣総理大臣決定であるガイドラインがあります。このガイドラインの「第四 整理」の「3.保存期間」という場所に以下のような規定があります。

 

【行政文書の管理に関するガイドライン(抜粋)】

3.保存期間

(1) 文書管理者は、別表第1に基づき、標準文書保存期間基準を定めなければならない。

(2) 1-(1)の保存期間の設定については、(1)の標準文書保存期間基準に従い、行う ものとする。

(3) (1)の基準及び(2)の保存期間の設定においては、法第2条第6項の歴史公文書等に該当するとされた行政文書にあっては、1年以上の保存期間を定めるものとする。

 

 ほぼ同じ規定が財務省文書管理規則にもあります。そして、1年未満で文書を廃棄している根拠をこの下線・太字の所に見出しています。つまり、「(廃棄した文書は)歴史公文書等に当たらない」と判断した上で1年未満で廃棄してもいいという事にしているだけなのです。

 

 では、「歴史公文書等」とは何かと言うと、公文書管理法第2条第6項に規定があります。

 

【公文書管理法(抜粋)】

6. この法律において「歴史公文書等」とは、歴史資料として重要な公文書その他の文書をいう。

 

 つまり、今の公文書の管理のあり方として、財務省(や防衛省)の考え方の背景には「オレが『歴史資料として重要な公文書その他の文書』に当たらないと判断したら、それは1年未満で廃棄してもいい。」という事があります(勿論、文書管理規則で保存期間が明確に定められているものは逃げられませんけど)。

 

 そんな事でいいのかね、と思います。そもそも、公文書管理法には第一条の目的に以下のような規定があります。

 

【公文書管理法】

第一条 この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。

 

 崇高な目的が掲げられています。それを「歴史公文書等に当たらないから、自由気ままに廃棄していい。」という抜け道でやっていこうというその姿勢そのものが私は間違っていると思います。