今日の本会議でIR法が可決されました。その過程で、野党共同提案のかたちで内閣委員長解任決議案の提出を行いました。内閣委員会野党筆頭である私が、その趣旨弁明を仰せつかっていました。

 

 他方、この決議案については、結局本会議で取り上げられませんでした。与党が反対したからです。なので、私の出番もありませんでした。

 

 この手の決議の趣旨弁明というのは、時間無制限である事が通例であるため、それなりに気合を入れて準備をしました。と言っても、これまでのブログ記事を繋ぎあわせて整えた部分が大半です。

 

 表現は本会議での発言ですので、そういうスタイルになっています。少し表現を意図的にキツくした所もあります。ただ、ここに経緯と(私が見た)問題点が凝縮されています。私は「反対のための反対」をしていません。

 

 時間無制限を想定しているので長いですが(本当はもっと長かったのです。)、折角書いた原稿をポシャらせるのももったいないのでここに掲載します。

 

≪趣旨弁明発言案≫

民進党の緒方林太郎です。

 

私は、民進党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました内閣委員長秋元司君解任決議案について、提案の趣旨を説明いたします。

 

「主文
本院は、内閣委員長秋元司君を解任する。」

 

以上であります。以下、その理由を申し述べます。

 

【経緯】
まず、冒頭、内閣委員会理事として、今国会における内閣委員会の審議について申し上げます。今国会は9月26日に始まり、予算委等を終えた後、10月14日の第1回の内閣委員会で閣僚の所信+人事院勧告の報告を受けました。そして、10月19日の第2回、10月21日の第3回の委員会で閣僚所信に対する質疑をしています。内閣委員会は所管の大臣が多い中、TPP審議等と並行する中、日程協議等に我々としても真摯に応じ、9時間の所信質疑時間を2日で終えております。

 

その後、10月26日の第4回には、前国会提出の宇宙関係2法の審議をしました。鶴保大臣出席の上で、民間事業者のロケット打ち上げに関する体制整備、リモートセンシング記録の規制に関して議論を深め、我が方も賛成の上可決しています。

 

また、10月28日には第5回には一般質疑をやった上で、国家公務員給与法の趣旨説明を山本大臣から受けました。その後、11月2日の第6回には国家公務員給与法を我が方も賛成の上可決しています。

 

ここから、暫く委員会は開かれていません。しかし、これはTPP採決、年金法案をめぐって国会が不正常化した事が大きな要因です。しかも、この間、我々は与党から非常に要望の強かった、議員立法である官民データ利活用法案の党内討議をきちんとしたかたちで進めました。与党では平井卓也筆頭理事、福田峰之理事、我が方も議連の原口一博議員、高井崇志議員が中心となって進めてきた法律であり、今後、地方自治体等でのビッグデータの活用を促すものです。最終的に全会一致とはなりませんでしたが、それでも委員長提案とする事に現場の理事としてしっかりと汗をかいてきたとの自負があります。

 

また、同時に、参議院では与野党共に頑張ってきた「ストーカー規制法改正案」も、参議院先議で議論されていました。これまでのストーカー規制法では対応が不十分である部分を、議員間でしっかりと討議した上で新しい規制を盛り込み、参議院で委員長提案とすることが出来たことは、衆議院議員としても非常に喜んでいた事でした。

 

国会では不文律として「議員立法は与野党の見解が整ったものから優先的にやっていく。」ということになっており、このようなかたちで、官民データ利活用法案、ストーカー規制法改正案といった与野党合意が成立する可能性が高いものを優先するのは当然の運びです。

 

また、我々としては、もう一つ与野党が意見を一致させることが出来そうな法案がありました。「政治分野における男女共同参画法」、いわゆる「クォータ法」です。我々野党は一致して、前国会、法案を提出いたしました。与党や日本維新の会の中でも議論が進んでいると承知しておりましたが、結果として、提出が12月9日となり、時間を確保できなかった事は残念でなりません。

 

そういう背景の中、我が方もきちんと党内調整が終わり、国会が正常化していた11月25日の第7回に「官民データ利活用法案」を委員長提案というかたちで採決しました。

 

このような中、我々としては、一般質疑を一回挟んで、参議院で委員長提案として可決された「ストーカー規制法改正案」を審議しようと考えておりました。しかし、突如、11月29日の本会議の途中に理事懇談会の申し入れがありました。内容は「明日(11/30)、ストーカー規制法改正案の採決をした上でIR法の審議に入りたい。」という事でした。普通は理事懇談会の要請は2日前、理事懇談会は前日開催で委員会立てという事でやってきております。あまりに性急な動きです。夕刻から理事懇談会を開催し、委員会立てを決める場合、質問を検討するのが非常に遅くなる事は言うまでもありません。提出は夜遅くになってしまいます。したがって、私から「あまりに性急な動きであり、受けられない。」とお答えしております。先日、自民党の小野寺議員がTVの討論会において「野党理事は電話にも出ない。」と誹謗中傷しておりましたが、この内閣委員会においてそのような事例は基本的にありません。

 

しかしながら、この時点で秋元委員長は職権で委員会立てを決めてしまいます。何故、ここまで円満に進めてきた内閣委員会をこのような信頼を損なうかたちで進めようとするのか、私にはとても理解できませんでした。誰の指示なのですか、安倍総理ですか、菅官房長官ですか、細田提出者ですか、竹下国対委員長ですか、本当に私は理解できませんでした。

 

また、我々としては、仮にIR法案の審議に入るのであれば、2年半前に一度IR法案を審議した際の与野党合意をベースに議論したいと述べました。その時の合意は国家公安委員長の出席、内閣委員会所管大臣は要求ベースで出席、参考人質疑、地方公聴会、他委員会との連合審査、これらは当時、内閣委員会の理事会で合意した事項です。我々は過去の経緯を無視した要望をしているわけではありません。2年半前、すべての関係者がIR法のような大型法案を審議するのであれば、これくらいの審議が必要だという共通の相場観を持っていたわけです。その後、国土交通大臣がIR整備担当となったこともあり、我々は2年半前の合意を若干修正して、国家公安委員長、国土交通大臣の出席、内閣委員会所管大臣は要求ベースで出席、参考人質疑、地方公聴会、他委員会との連合審査で、少なくとも50時間の審議を求めました。我々が申し入れたのはこれだけです。

 

しかし、我々欠席の理事懇談会、理事会でこれらの過去の合意はすべて無視されます。国家公安委員長が出席すると何か不都合ですか、IR整備担当大臣が出席すると何か不都合ですか、内閣委員会所管大臣に来てもらうのは内閣委員会として当然ではないですか、参考人の声は衆議院として聞かなくていいのですか、関心のある地方のお声は聞かなくていいのですか、ギャンブル依存症で関わりの深い厚生労働委員会との連合審査は不要ですか、観光政策との絡みで国土交通委員の声は聞きたくなかったですか、刑法との整合性を法務委員は心配しているのではないですか、これらの指摘に全く答えることなく、委員会を強行した事に疾しい所は全くないですか。誰の命令ですか。私にはすべての事が全く理解できません。

 

その後、怒涛の勢いで11月30日の第8回にてストーカー規制法改正案の採決に至ってしまいます。これは参議院で委員長提案となったものです。参議院での内閣委員長は我が党の難波奨二委員長でした。あまりに性急な動きで、難波委員長による趣旨説明、採決に加わる事が出来なかった事は残念でなりません。そして、我が方欠席の中、IR法の審議が進んでいきます。驚いたことに質疑に立たれた与党議員の中には「審議時間が余った」ということで「般若心経」を朗読された方も居ました。

 

そして、その2日後、12月2日の第9回の審議で採決に突き進んでいきます。こういう性急な進め方には、野党のみならず、与党幹部や財界からも疑問視する声が上がっております。

 

これだけの経緯があるにもかかわらず、提出者でもある西村議員はTVで我々の事を「審議時間が足りないという資格がない」と言っています。我々の対応に何か不備がありましたか、所信質疑が終わった後、閣法をきちんと終えて、与野党合意が整いやすいものから進めていった事はおかしいですか、2年半前に合意が得られたことを再度求める事はおかしいですか、たった5時間33分しか審議していない事への抗議が何故「資格がない」という評価になるのですか。

 

むしろ、安倍総理が先の厚生労働委員会で「こんな議論、何時間やったって意味がない」と発言したのが与党の基本方針になっているのだという事を現場で感じました。自民党で決めれば、連立与党が何を言おうと、野党が何を言おうと、世論がどう反応しようと、それが法律になるのだという驕りに対しては、将来必ず鉄槌が下されると強く抗議したいと思います。

 

【IR法の性質】

今回のIR法案については、「カジノ法案」です。しかし、こういう事を言うと、委員会でも「レッテル貼りだ。今回整備するのは、包括的なリゾート施設であり、カジノはその一部に過ぎない。」という反論が返ってきます。また、よく「IRの中でカジノが占める面積は3%」という言い方もたくさん出てきました。こういう本質を見誤らせる言論が委員会審議でも跋扈していました。

 

しかし、世界のIRの中には「収益の8割がカジノ」という場所もあります。「面積3%」は安倍政権によくありがちな「都合のいい数字」です。面積だけでその重大性を矮小化する数字のマジックはもう不要であり、そのような理屈だけを振り回すのは、国民を欺く行為であり止めるべきです。

 

また、「カジノ法ではない」との主張に対しても、よく考えていただきたい。ディズニーランド法がありますか、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン法がありますか、ハウス・テンボス法がありますか。リゾート施設を作るのに、特別法は必要ないのです。何故、このような法律が必要になっているかといえば、それは刑法上の「賭博」に当たるカジノの違法性を阻却する必要があるからです。カジノを開設する行為は賭博場開帳、そこでカジノに参加するのは賭博です。刑法第二十三章の賭博罪、賭博場開帳図利罪の構成要件はすべて満たしています。先日、ある与党議員の方が「IR法が出来れば、カジノは賭博でなくなる。」という解説をマスコミにしているのを漏れ聞きましたが、これは全く違います。IRと言って、周囲にたくさんリゾート施設をくっ付ければ、賭博であるカジノの本質が変わるのではありません。

 

しかし、それでも違法でないとすることが出来るのは、刑法第三十五条の正当行為とする必要があり、そのためには法律が必要なのです。そこを「IR法でありカジノ法ではない。」とするのは、立法機関に拝命する者として看過できない議論です。何を恐れているのですか、カジノ法と言われると評判が下がると思っているからですか、そんなに自分達が出している法律に自信がないのですか。

 

そもそも、何故、この法律は議員立法なのでしょうか。議員立法で政府にやれと指示を出し、政府が作業をするという二本立てなのでしょうか。それはこれまでの賭博罪の違法性阻却について、政府が極めて厳しい姿勢を取ってきたという事があります。かつて、カジノ特区を作ろうという動きがありました。その時、最後の最後まで法務省が反対をしたという経緯がありました。今回もカジノの実施法を閣法で出す事について、政府が反対したのでしょう。政府が出したがらないので、立法府として「やれ」と指示する法案を作らざるを得なかったのでしょう。与党として、本当に本法案が必要だと感じるのであれば、何故閣法でやる努力をしないのでしょう。今、やろうとしているのは、政府のこれまでの賭博罪違法性阻却に対する厳格な姿勢を、議員立法で乗り越えるという事ではないですか。違いますか。

 

【違法性阻却】

そういう観点から、カジノ法と呼ぶことには十分な正当性があり、かつ、その論点の最重要課題は「違法性阻却」となります。私はこの点に絞り込んで、12月2日採決前の審議に立っています。

 

この違法性阻却については、平成25年11月20日、我が党の玉木雄一郎議員の質問に対して、当時の平口法務大臣政務官が非常に重要な答弁をしています。

 

(平成25年11月20日衆議院内閣委員会)
○平口大臣政務官 お答えをいたします。(略)

そこで、お尋ねのカジノにつきましては、一般論として申し上げますと、刑法に、賭博罪、また賭博場開張等図利罪、こういうものがございまして、これらが成立し得る、このように考えております。

(略)

他方、特別法を制定いたしまして、賭博罪が設けられた趣旨に反しない制度が構築され、その範囲内で実施される、こういうふうな場合には、カジノに係る行為について刑法上違法とされないこともあり得る、このように承知をいたしております。

そもそも、刑法が賭博を犯罪と規定した趣旨は、賭博行為が、勤労その他正当な原因によらず、偶然の事情により財物を獲得しようと他人と相争うものでございまして、一つは、国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害するということ、もう一つは、副次的犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあるということ、こういったようなことにあるわけでございます。

そのため、法務省といたしましては、これまでも、刑法を所管する立場から、目的の公益性、運営主体等の性格、収益の扱い、射幸性の程度、運営主体の廉潔性、運営主体の公的管理監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害の防止、こういったような点に着目し、賭博に関する立法について意見を申し述べてきたところでございます。

これからも、賭博に関する特別法が検討される場合には、このような観点から協力したい、このように考えております。

 

正にここで言う8つの着目点、つまり、①目的の公益性、②運営主体等の性格、③収益の扱い、④射幸性の程度、⑤運営主体の廉潔性、⑥運営主体の公的管理監督、⑦運営主体の財政的健全性、⑧副次的弊害の防止が重要になってきます。

 

これを一つ一つ説き起こしていきたいと思います。

 

では、今回のカジノ法案で何処に公益性があるのか、という問いには、カジノ管理委員会でしっかりやるとしか答弁がありませんでした。何がどう「しっかり」規定されるのかは、すべて実施法に委ねるそうであります。しかも、公益性として、財政の改善、文化の振興といった答弁をしていました。しかし、法律には入場料、納付金を「徴収することができる」となっているだけです。徴収しても、しなくてもいいのです。それでどうやって公益性のある事業が実現できるのでしょう。答弁では「徴収するものと理解している」という事でした。それはただの提案者の「祈り」でしかありません。

 

法案に書かずに、審議で提出者が「祈り」を語れば法規範になるのであれば、この国会の審議は不要です。究極、「カジノを作ります」とだけ法律に書いて、それ以外の規制は提案者が滔々と「祈り」を語れば足りるという事にすらなりかねません。法案に書いてある事と反対の事を答弁し、それを「考慮すべき提案者の立法意思だ。」と言い切る姿勢は、議会制民主主義の危機を覚えました。

 

また、答弁の中には「税収が上がる」事を公益性の一つに挙げていましたが、それであれば、世の中にあるすべての株式会社は公益性のある事業をやっていることになります。そんな珍妙な答弁で公益性を語る事には苦笑するしかありませんでした。「税収が上がる」事が公益性の要件になっている事も、提出者の意図であり、それを踏まえて、政府は法律を作るのですか。違法性阻却に厳しい姿勢を取ってきたこれまでの政府関係者は泣いていると思います。

 

また、今回のカジノ法は、純然たる民間主体による賭博の違法性を阻却します。その観点から、「運営主体等の性格」についても、運営主体が純然たる民間主体であってもいいのかという点についても答弁がありませんでした。これまでの競馬、競輪、オートレース、モーターボートといった公営競技はすべて公が運営主体です。そして、公益性のある事業への支出が義務付けられています。それと全く異なる民間事業者であっても、違法性阻却可能という事になれば、違法性阻却に際しての「運営主体等の性格」という着目点は全く意味をなさないという事になるはずです。この点について何か有益な答弁をされましたか。

 

「収益の扱い」については、先程も触れましたが、この法律では収益がどう扱われるのかについてメカニズムが何処にも書いてありません。政府が行う事となっているギャンブル依存症への対応、反社会勢力への対応等の必要な措置に収益が充てられるかどうかも法律では書いてありません。何度質問しても返ってくるのは、答弁者の漠然とした「祈り」だけであります。本来であれば、公益性のある事業への支出と政府の対策に掛かる費用以上の入場料と納付金を徴収しない限り、このモデルは回らないはずであるにも関わらず、その辺りを完全に無視して法案作成をしている事に大いなる危惧を覚えます。

 

また、私から「収益が一切還元されない場合であっても、違法性は阻却され得るのか。」という質問に対して、盛山法務副大臣は「総合的な判断」というとてつもない答弁をしました。入場料、納付金を取らない事が法文上は可能である以上、こういう事態が生じ得ます。「収益が一切還元されない場合」でも、違法性の阻却が出来る可能性を残す答弁をした法務副大臣は、その任にないと言って差し支えないでしょう。

 

射幸性については、今回のカジノ法案にあるカジノは「賭博」である事を再度想起する必要があります。賭博はその定義において射幸心を助長するとされています。助長するから賭博なのであり、今回の法律は射幸心を助長するものであるという事を否定することは出来ません。では、その射幸心をどうすれば違法性は阻却されるのか、これについても答弁はありませんでした。すべてはカジノ管理委員会による適切な規制というレベルを超えるものではありませんでした。

 

この射幸心という言葉は、風俗営業適正化法にも出てきます。ぱちんこ屋やまあじゃん屋は「射幸心をそそるおそれのある」遊技とされています。私は委員会で「射幸心を助長」と「射幸心をそそるおそれ」の違いについて聞きました。与党席からは笑いと「辞書持ってきて調べろ」というヤジがありました。しかし、考えてください。この「助長」と「そそるおそれ」の間に違法と合法の太い線が引かれるというのが現在の法制度なのです。そこを詰めた議論をしようとするのが笑いの対象になるというのは、与党の諸君の法意識の欠如を物語っているとしか言いようがありません。

 

今回のカジノ法案は「射幸心を助長する」ものを作るのだという意味合いをよく噛み締めてほしいと思います。助長した結果、依存症になる人が居る事は心配になりませんか、そういう議論をすべて先送りにしている事に本当に不安を覚えませんか。与党諸君の胸の中にある良心に私は訴えたいと思います。

 

運営主体の廉潔性とは何ですか。返ってくるのは「健全なカジノ」という漠然とした表現だけです。敗者を作り、そこから収益を得る賭博そのものが定義として「国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害するばかりでなく、副次的な犯罪を誘発し、さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれ」を持つものなのです。そういう事業者に求められる廉潔性とはどの程度のものなのか、説明されましたか。「健全なカジノ」という言葉だけで逃げていませんか。しかも、これまでの公営競技は公の事業主体ですから、廉潔性を求める規制を掛けやすかったですが、今後、純然たる民間企業に政府が課す事が可能な廉潔性は何処までが可能なのか、考えたことがありますか。

 

運営主体の財政的健全性についても何らの答弁もありませんでした。カジノ事業者の収支が悪くなったらどうする事を想定していますか。即座に廃業させますか、それとも、収支が悪くなったら入場料を徴収しない、納付金を徴収しない事で政府が経済的にサポートする事もあり得ますか。

 

副次的弊害について、日本人の入場制限について、提出者からは「憲法との関係がある」との答弁がありました。私はこんな憲法解釈を許してはならないと思います。カジノに入る事を制限すると憲法違反になるという理屈は提出者の意思として、実施法を作成の際、考慮されるのですか。また、ギャンブル対策という事で修正案には書かれています。しかし、皆さん、何がギャンブルかという事を考えたことがありますか。刑法の賭博の要件に当て嵌まるのは公営競技のみならず、FXやデリバティブの金商法、そして先物取引法が入ります。また、刑法の賭博として位置づけられていないぱちんこ、更には風営法に規定される様々な遊技はどうするのか、ギャンブル依存症と口にしたところで、そのスコープそのものから議論していかないといけないのが現実なのです。ギャンブル依存症と書き込めば、それで政府に対するマンデートとして十分だという事でもないのです。

 

ここまで法務省の着目点について論点を述べました。どれ一つとして納得いく答弁が得られたとは思えませんでした。繰り返します。この法律の中核は「違法性阻却」です。阻却するために必要な着目点はもう提示されています。そして、審議の過程でその論点が十分に考慮されたとは思えません。

 

衆議院、参議院で非常に長い附帯決議が付きました。しかし、それで事足りるのであれば、すべて附帯決議でやればいいという事になります。この法律は、国会が役所に与えるマンデートです。閣法でやる事を嫌がっている政府に対して、「この範囲でやれ」と指示するものです。その法律が穴だらけで、審議が始まったら指摘がなされ、都合が悪くなると、法的拘束力のない附帯決議、更に法的拘束力の下がる提出者の「祈り」だけでカバーしているという事自体が、この法案の不備を物語るものであります。

 

これだけ不備があるのに、委員会審議をたったの5時間30分程度で打ち切った事には強く抗議したいと思います。実はIR法の審議まで、内閣委員会は極めて円満でした。私は我が党の神山理事と共に、秋元委員長、平井筆頭理事、公明党の佐藤理事、自民党の谷川理事、松本理事、福田理事、牧島理事、共産党の島津議員、日本維新の会の浦野議員で構成される理事会で最大限の円満な委員会運営をやって来ました。それを破ったのは我々ではありません。とても残念でなりません。

 

【結語】

数多の論点があり、国民的関心が高いにもかかわらず、それらへの対応を放棄した事、一方的に委員会を強行した事、これらについて強く抗議した上で、私の趣旨弁明といたします。