IR法案を契機に「ギャンブル」というものに焦点が当たっています。世間的には「まあ、こういうものがギャンブルだろう。」という相場観があるように思いますが、実は結構、これが難しいのです。

 

 まず、刑法の賭博罪+富くじ罪の違法性阻却をされているものが「ギャンブル」だと考えてみましょう。実は刑法第二十三章の賭博罪、富くじ罪の違法性が阻却されているものは以下のようなものがあります。

 

【刑法第二十三章の違法性が阻却されているもの】

・競馬法(昭和23年法律第158号)
・モーターボート競走法(昭和26年法律第242号)
・小型自動車競走法(昭和25年法律第208号)
・自転車競技法(昭和23年法律第209号)
・金融商品取引法(昭和23年法律第25号)※FX取引やデリバティブなど
・当せん金付証票法(昭和23年法律第144号)※宝くじなど
・商品先物取引法(昭和25年法律第239号)※米、麦等の商品先物など
・スポーツ振興投票の実施等に関する法律(平成10年法律第63号)※TOTOくじなど

 

 いわゆる公営競技と言われているものや宝くじ、サッカーくじは想像できると思いますが、実は金商法、先物取引法もこれに当たります。賭博とは「偶然の勝負に関し財物の得喪を争うこと」を指しますので、実はFX、デリバティブ、商品先物もそういう要素があるという事です。

 

 そして、この中にはぱちんこが入りません。日本の法令上は「遊技」だからです。では、(法令上は賭博ではなく)遊技であるぱちんこを含めようとすると、風営法に踏み込まざるを得ません。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第二条には以下のような規定があります。

 

【風営法第二条(抜粋)】

四  まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業

五  スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)

 

 第四号の「その他」に何が含まれるかと質問したところ「アレンジボール遊技機、じやん球遊技機等」という返事が来ています。また、いわゆるパチスロ(回胴式遊技機)も四号営業です。

 

 さて、ここまで読んでみて、「ギャンブル依存症対策」という場合、何処までを対象とするのかについて、以下のような疑問が出て来ます。

 

① 富くじ罪の扱い(宝くじ、サッカーくじ)

② 金商法、先物取引法の扱い

③ 風営法で規制されているものの扱い(何処まで含めるか)

 

 依存症対策をする事については大賛成です。やらなくてはいけません。ただし、漫然と「ギャンブル」という言葉を定義なしに使っていると、日本の刑法及び風営法が絡みあう迷路に嵌ってしまいます。別に現時点で結論めいたものは持っていないのですけど、単なる論点提示として。