5日から13日まで、衆議院内閣委員会メンバーで海外出張しておりました。行先はモーリシャス、キプロス、イスラエルです。先の国会で「サイバーセキュリティ法改正」が通ったことを踏まえ、そういう視点を中心に据えながら幅広く視察に行ってきました。

 

 まずはモーリシャスです。多分、大半の方は馴染のない国でしょうが、インド洋に浮かぶ島でマダガスカルの東方にあります。サイバーにかなり力を入れている国だとの、平井卓也与党筆頭の勧めもあり行きました。人口120万程度ですが、近々大使館開設だという事もあり、今後が期待される国です。

 

 元々インド系が強い国だという事は知っていましたが、それでも「アフリカだろ」という先入観でした。行ってみて驚いたのは、「ほぼインド」ということでした。1800年代半ばに砂糖栽培のため、それまで働いていた奴隷に代わり、インド人が入植してきました。首都ポートルイスにある世界遺産「アープラヴァシ・ガート」はその受入港でした。総じて南インド系の方が多かったですが、その他にも中国福建省から入ってきた中国系モーリシャス人の方が居られました。なお、インドとの関係が極めて強いため、中国の進出度合いはそれ程大きくはなかったです。

 

 国民の気質は「働き者」という印象です。お隣のレユニオン島が、フランスの海外県である事から補助金漬けで怠惰な感じがするのとは大違いです。砂糖栽培でかつては儲かりましたが、今は砂糖価格が下がっているため、色々な方策で国を発展させようと一生懸命です。先の述べたようにアフリカというカテゴリーに無いような気がするのですが、一人当たりのGDPはそろそろ10000ドルを超えそうでしてアフリカで数えてみると有数の発展度です。

 

 国際金融センター、IT、観光等での発展を追求しているのですが、今はアフリカ市場への進出を非常に強調していました。ここが我々の勘違いの最たるものでして、我々はどうしても「アフリカ」という目で見たくなりますが、モーリシャス経済の元々のベースはインドとの関係によるものでした。インド経済との強い関係を所与の物として、それにプラスαでアフリカ市場を狙っているというイメージです。

 

 しかも、これまではインド市場で稼いだお金はインドでは非課税だったそうですが、最近、インドとの租税協定が結ばれ、インド市場への投資収入にも課税がなされるということで、インド市場への中継基地としての優位性が少し失われつつあるので、アフリカにもどんどん目を向けていきたいということです。

 

 税は所得税、消費税、法人税、すべて15%であるものの、今後、外資を呼び込むために「(インドに加えて)アフリカ3か国への投資をする、一定の雇用(たしか技術職を10名)をする、事務所を構えるのであれば、8年間法人税免除。」という政策を打ち出すことが最近決まりました。かなり踏み込んだ政策です。

 

 インド市場との歴史的な繋がり、アフリカとの親和性、何処の国とも関係は悪くない、といったことを考えれば、たしかにこれらの市場を狙ったハブとしての可能性は大きいと思いました。日本企業でまだ進出している所はありませんが、「うちの国のプラットフォームを利用して、インドに投資している企業が出始めている。」と言っていました。

 

 更なる強みとしては、「国民の大半が英語、フランス語が話せる」ということでした。この言語インフラの強みは相当なものです。私がセネガル在住経験がある事を話したら、お会いしたシナタンブー技術相は「仏語圏アフリカとしての繋がりはかなりのものがある。仏語圏アフリカへの投資のプラットフォームとしてもうちを使ってほしい。」と言っていました。

 

 言葉が使えるというとすぐに「コールセンター等での欧米からのアウトソーシング先」と思いたくなりますが、モーリシャスはもうそこにはあまり重きを置いておらず、その先を見ていました。発展に伴い人口増加率が下がってきているので、もう単純労働で人口増を吸収するのではなく、付加価値型経済にどんどん突き進んでいく気構えがビシビシ伝わってきました。

 

 また、サイバー、ITといった分野ではかなり熱心で、首都ポートルイス郊外にはサイバーシティを作って、これからの振興を目指しています。シナタンブー大臣は「日本と関係を持っていきたい。近々行われるアフリカ開発会議(TICAD)で、首相から安倍総理にも提起したい。」と言っていました。かなり熱心な働きかけがあり、今後、MOU(Memorandum of Understanding)レベルから関係を作っていけるよう外務省や関係省庁には伝えたいと思います。これは先方の熱意にかんがみれば、今回の視察の成果に繋げられるでしょう。

 

 モーリシャス、そしてその後に行ったキプロスで感じた事なのですが、「島嶼国の発想」という事を学びました。それは何かと言うと「高目を狙わない」ということです。自国が世界で中核的な役割を果たそうというい気はなく、あくまでも大きな市場向けの「ハブ」を目指していきたいということです。そういう国の面白さを利用していくフロンティアを強く印象付けられました。

 

 働き者で、言語インフラがしっかりしており、金融、ITでのインフラも進んでおり、インド、アフリカ両面を狙える好位置にある、なかなか面白い国でした、モーリシャス。大使館開設に伴い、近々初代大使が赴任するでしょうから、あれこれ示唆しておこうと思います。