2020オリパラ招致をめぐる様々な疑惑については、我々も党内でよく調べていますが、ちょっと意外なテーマについて今日は書きます。

 

 まず、仮にオリパラ招致で不正な金銭の授受があったとして、根本的な問題は「それは日本で犯罪か。」ということです。結論から言うと、「多分、犯罪ではない。」ということになります。まず、日本においては民間団体間の金銭の授受には賄賂罪は適用されません(一部例外があります。)。

 

 ただ、外国公務員等への賄賂は、OECDで議論が進み、日本でも不正競争防止法で罰則が手当てされています。外国公務員等に賄賂を贈ると、日本国内で罰せられます。さて、ここで重要なのは、IOCや国際陸連に勤務する者は外国公務員「等」の「等」に入るのかということですが、まず、法制定過程でIOCは明示的に外れているそうです。国際陸連についてはどうかということですが、政府ははっきりとは言いませんでしたが、かなり可能性が低いでしょう。

 

 しかし、フランスは違います。まず、一定の条件下で民間団体間でも賄賂罪が成立します。しかも、ここからがスゴいのですが、2012年刑法改正でスポーツ関係に特定した賄賂罪が成立することになっています。具体的には、スポーツに特定した罰則はどちらかと言うと「八百長」に関するものでして、「スポーツにおける賭け(paris sportifs)」に対する賄賂行為が罰せられます。

 

 ただ、今回のオリンピック招致事例では、元々の民間団体間での賄賂罪の適用がある可能性が高いため、フランスでは捜査が進んでいるものと思われます。

 

 ここからが難しいのですが、安倍総理、馳文部科学大臣、遠藤オリパラ大臣がよく言う「フランスの司法に最大限の協力をする」という、その「最大限の協力」です。党内チームで、私から「ここでいう協力というのは、日本とフランスとの(公的ルートでの)捜査共助か?」と聞いたら、答えは「そうです。」でした。

 

 しかし、日EUの捜査共助の枠組みでは、自国で罰せられない犯罪については、捜査共助を断ることが出来るとなっています(普通、捜査共助というのはそういうものです。)。なので、今回の事例は、フランスでは犯罪だけど、日本では犯罪でないので、日本の司法はフランスから共助要請が来ても、あくまでも任意での捜査共助しか招致委員会関係者に要請できません。招致委員会関係者が断るとか、協力内容に限定を掛けてしまうことも可能です。招致委員会は(既に解散していますが)、組織体としてはNPO法人なので、政府に出来ることは「国としては最大限協力してほしいと思っているので、宜しくね。」、ここまでです。

 

 招致委員会関係者が、任意の共助要請にどの程度答えるのか、結構、ここはポイントではないかと思います。 

 

 なお、フランスが本件で頑張っているのは、2024年オリンピック開催地にパリが手を挙げている事と無関係ではないと思います。こういうカネが飛び交う事例を防止して、クリーンにカネの掛からないかたちで選考プロセスをやりたいと思っているのではないかと思われます。現時点での対抗馬はロスアンジェルス、ローマ、ブダペストです。

 

 いずれにせよ、今回の事例を踏まえれば、こういう「民間団体間での賄賂罪」、「スポーツ(八百長)に特定した賄賂罪」については、日本でも検討する必要があると思います。