【このエントリーはFBに書いたものを加筆修正したものです。】

 

 今国会において、与野党の有志議員が司法書士会と協力しながら作成した成年後見制度の活用を進める法律(議員立法)が通りました。私は、同法を審議する内閣委員会の野党筆頭理事(野党代表)を務めているため、法律の成立に現場で関わりました。

 

 現在、高齢化が進む中、大きな課題として「財産管理」があります。認知症等の方の財産が適正に管理されることで、安心した社会を構築していくことは日本にとって急務です。ただ、課題は山積でして、今回成立した法律を通じて、家庭裁判所の体制が追い付いていないといったテーマ等、色々なハードルを越えていければいいと思います。

 

 その中で、同法について司法書士会の方とお話をする中で、成年後見に伴う横領等の不正事案への話が出てきました。報道でもよく出てきますので、問題意識をお持ちの方は多いと思います。当然、司法書士会も問題意識は共有しており、司法書士会が立ち上げた公益社団法人「成年後見センター・リーガル・サポート」で「業務報告制度」を行っています。これは何かというと、同制度を通じて個々の成年後見事案をチェックするということです。必要かつ重要な制度だと思います。

 

 普通の時は個別の名前をマスキングしてチェックしている、不正事案が生じたら原本確認をする、ということでやっていたのですが、昨今、不正事案が多いことから、内閣府の公益認定等委員会から「平時でも、原本確認をランダム・チェックのかたちでやるべし。」というお達しがあったそうです。

 

 他方、同センターの方から「幾つかの既存の制度との関係で、リーガル・サポートの活動に困難が生じることがある。」とのご指摘がありました。具体的には①障害者権利条約におけるプライバシー権、②司法書士法第24条の守秘義務、③個人情報保護法との関係で、原本確認を含む業務報告制度は問題がないのかとのご指摘でした。法律の専門家の方ですから、やはりこういう法律との整合性がクローズ・アップされるようです。

 

 私自身、利用促進と不正事案防止は車の両輪だと思っており、何とかこのリーガル・サポートの活動の障害となりかねない関係法令の解釈を確定させたいと思い、18日、衆議院法務委員会で本件について質問しました。

 

 具体的な質疑は、以下の緒方林太郎の部分をクリックしていただければと思います。13-4分ですのでそれ程長くはありません。

 

【質疑要約】
○ 冒頭、内閣府に設けられる成年後見利用促進委員会には実務者を含めるべきとの質問をしました。その方向で検討したいとの答弁がありました。

 

○ その後、上記3点のハードルについて質問しました(答弁者は外務省、法務省、内閣府(成年後見関係部局、個人情報保護部局))。答弁においては、ちょっとヘッジが掛かっている部分はありますが、基本的にはこれら3点がリーガル・サポートの活動の業務報告制度に反するものとは認識していないし、実務上もそうなっていないと答弁がありました。

 

○ 最後に、成年後見制度の利用促進、リーガル・サポートの活動の重要性について法務大臣に聞いています。温かいエールが送られていると思います。

 

 実はこの質疑はたったの15分弱ですが、事前の打ち合わせではかなり時間を使いました。私としては「良い答弁」が欲しいので、通告の段階で答弁についてもよく役所と相談しました。夜遅くまで各部局と調整をする等、かなり大変だったのですが、結果としてみれば、全体として良い答弁が得られたのではなかったかと思います。

 

 今後、成年後見活用法により体制が整備され、成年後見が利用促進され、認知症等の方々が増大する中、安心できる社会が構築されることを心から願います。その過程で、リーガル・サポートの業務報告制度によって不正事案が防止され、成年後見制度の信頼性が益々高まってほしいです。

 

 メディアには取り上げられないネタですけども、今国会におけるメモリアルな質疑の一つでした。