まずは、TPPの協定文について以下の第八章の各附属書の規定をよく読んでいただければと思います。基本的に文章の構造は同じですが、それぞれ医薬品、化粧品、医療機器に関する部分です。

 

附属書八-C

14. いずれの締約国も、医薬品について当該締約国による販売許可を受けるための条件として、当該医薬品について製造国の規制当局による販売許可を受けることを要求してはならない。

 

附属書八-D

18. いずれの締約国も、化粧品について当該締約国による販売許可を受けるための条件として、当該化粧品について製造国の規制当局による販売許可を受けることを要求してはならない。

 

附属書八-E

15. いずれの締約国も、医療機器について当該締約国の規制当局による販売許可を受けるための条件として、当該医療機器について製造国による販売許可を受けることを要求してはならない。

 

 簡単に言えば、アメリカで作った医薬品、化粧品、医療機器について、それがアメリカで販売許可を受けていなくても(つまり、アメリカでは全く流通していなくても)、日本で販売許可を求めることが出来ることになります。

 

 まあ、政府に聞けば、「日本では販売許可に際して、審査、承認プロセスはしっかりしているから、製造国での販売許可の有無は元々関係ない。」と言うでしょう。恐らく、現行法でも、日本で販売許可を出す際、製造国での販売許可は義務ではないでしょう。したがって、この附属書の規定による国内法改正はありません。これまでの実績については、よく調べてみたいと思います。

 

 ただ、「アメリカで製造した薬が、最初に販売され、使用されるのが日本になる(こともあり得る)。」と聞くと、大半の日本人は「えっ、アメリカですら使われていないのに、何故、まず日本で販売するの?」と違和感を持つのではないでしょうか。ある知人は「実験台にされることだってあるということか?」と言っていました。

 

 私はそこまでは言いませんが、感情論として「まず、おたくの国で実績積んでからにして。」と言いたくはなります。

 

 ここは少し意見の分かれるところかもしれませんね。「世界の何処でも使われていない最新の化粧品」という所に希少価値を見出す方も居られるかもしれませんし、ましてや「効果が高い最新の(アメリカで製造された)医薬品は、別にアメリカで使われていなくても、まず使いたい。だから早く日本で承認すべし。」という要望をお持ちの方の思いを否定する意図はありません。

 

 ただ、それは現行の国内法でも可能であるとするなら、新規に条約にこういう規定が入ることの気持ち悪さだけが残るのです。