題は「書かれておらず、言われてもいない」という事ですが、今日はTPPについて少し書きたいと思います。これまで暫くTPPについては書くのを控えておりました。というのも、ここに書くと国会質疑でのネタバレになってしまう恐れがあるためです。

 某紙記者さんから「役所に『緒方さん、ブログにこんな事書いてますよ。』と話したら、『既にチェックしています。』と返事がありました。」とご忠告を受けたため、審議中は控えておりました。

 今日のお題はSPS協定、TBT協定に関する部分です。検疫とか規格とかの話が、TPP協定によって今後どうなるかということです。検疫や規格(例えばJIS、ISO)が貿易の障害にならないようにするというルールが、元々WTO協定の中にもありまして、それがこのTPPでどう強化され、されていないのかということは実はこのTPP協定の審議の大玉の一つです。私のみならず、玉木議員、福島議員を始めとする猛者と一緒に本件は事前によく勉強しました。

 政府の答弁は、「現在の検疫、規格等の規制は、TPP協定によって影響を受けるところは無い。」という感じです。これは正しいです。今の規制は変更を迫られないでしょう。「なんだ、別に心配しなくてはいいではないか。」と思われるでしょう。政府の答弁もそういう効果を狙っていると思います。

 しかし、ここからがポイントでして、「『新規に』検疫、規格等を導入しようとするとどうなるか。」という点については何も言っていないのです。条文ベースであれこれ書くことはしませんが、TPP協定でこのハードルは格段に上がります。正にここが題の「Unwritten and Unsaid」の部分です。

 例えば、食品表示を今より強化しようとする場合、アメリカの利害関係者のご意見拝聴という公式のプロセスを入れる必要があります。その他にも、その強化をするための立証責任が格段に上がります。

 TPPでは農業の関税障壁ばかりがクローズアップされますが、結構な大玉としてSPS、TBTの両協定、知的所有権、国家企業、医薬品関係、諸々のサイドレター等、論点は山のようにあります。政権与党は40時間程度の審議と言っていましたが、とてもとてもそんな時間数では足らないと思います。

 コメのミニマム・アクセスを受け入れたWTO協定の衆議院での審議が50時間程度でした。しかし、あれは協定妥結の時の与党は細川政権、妥結を激しく批判した自民党は野党でした。一方、審議の際は自社さ政権で、妥結時の与党は野党に回っていました。国会審議の4割くらいは、野党から自社さ政権に対して「なんで、妥結の時反対したの?」というもので、審議としてはちょっと奇妙なものでした。その時ですら50時間審議です。今回とは事情が全く異なります。

 TPPの審議は継続審議です。衆議院の解散があれば廃案になります。秋の国会で仕切り直しで、上記のような論点についてしっかりと審議していきたいと思います。