【このエントリーは、FBに書いたものに加筆修正を加えたものです。】

 今国会は内閣委筆頭理事、予算委、TPP特委に属しているのみならず、地方創生特別委員会にも所属しています。同期の宮崎岳志筆頭理事、そして篠原豪理事のご指導を得ながら、一般質疑、法案審議に加わっています。「地方創生」という事で、時折地元関係の話も取り上げています。

 その中で、特区法の審議において、先般、北九州市が提案していた「特別養護老人ホームにおけるロボットの活用」というテーマを再度取り上げました。地元北九州市が提案した案件ではありますが、国全体に関わる面白いネタなのでご紹介します。

 北九州市には安川電機を始めとする、世界的にも重要なロボット産業があります。その一方で、急速な高齢化に伴う介護需要の増加、人手不足という課題もあります。

 これを踏まえ、北九州市は特別養護老人ホームでのロボットの活用を進めるため、今の「1対3(職員1名で3名のお世話をすることが出来る)」という基準を「職員1名+ロボットで4名のお世話をすることが出来る」というふうに見直してくれないかと、特区の枠内で国に要望しました。

 しかし、厚生労働省の答えは必ずしも芳しくありませんでした。私が3月16日の地方創生特別委員会で、本件について質疑をした際の答弁が厚生労働省の当初の姿勢を如実に表しています。

【3月16日地方創生特別委員会議事録(抜粋)】
○緒方委員 (前略)うちの町の話でありまして、我が町には安川電機というロボットの会社がございます。最近は、日本でも、世界的にも有名になってきているロボットの会社ですが、介護についてもロボットをどんどん活用しようということで、我々の町から政府の方に提案を出させていただいたのが、特養の配置基準で、本来は一対三で配置をするということに対して、一人足すロボットで四人という配置基準で緩和してほしいという提案を出させていただきました。
 これに対する対応、これは内閣府ですかね、厚生労働省ですかね、御答弁いただければと思います。

○浜谷政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘の提案でございますけれども、当初は先生の御指摘のような提案でございましたけれども、現時点において提案されておりますのは、ユニット型介護老人福祉施設の共同生活室、いわゆるリビングスペースについて、現在、ユニットごとに設置することとなっておりますところ、北九州市からの御提案におきましては、国家戦略特別区域において介護ロボットを導入し実証実験を行う場合には、この共同生活室を隣接する二つのユニットが共同して利用できるようにするというものになっております。
 この提案につきましては、今月二日に開催されました国家戦略特別区域諮問会議におきまして、当該提案を実施する方針が決定されたところでございます。
 現在、その具体的な措置方法につきまして検討中でございまして、関係省庁との調整が終了次第、速やかに対応してまいりたいと考えております。

○緒方委員 それも知っておりますが、当初の提案を厚生労働省として断った理由は何ですか。

○浜谷政府参考人 お答えいたします。
 平成二十六年度の調査によりますと、施設における実際の人員配置につきましては、先ほど先生御指摘のとおり、最低基準、入所者三人に対しまして介護・看護職員一人でございますけれども、実際は最低基準よりも手厚い配置になっておりまして、現行の基準の範囲内におきましても介護ロボットを用いた実証実験を行うことが可能であるということが理由でございます。
【議事録終わり】

 答弁は長いのですが、簡単に言うと「別にそんな基準緩和しなくても、ロボットの実証実験はやれる。そもそも、今でも北九州市では1対3よりも手厚くやっているのだから、1+ロボットで4人の世話をするような規制緩和の必要性が無い。」という理屈でした。その理屈自体は絶対に間違いではありません。

 しかしながら、私は何度も厚生労働省に「北九州市がやりたいと言っているのだから、その必要性をそのものを否定するのはおかしい。そんな事言っていたら特区など進まない。」、そして、「何かインセンティブがないと、ロボットの活用など進まない。今の基準のままでやれるからそれでいい、というのはあまりに残念な発想。基準緩和で経済的なインセンティブを与えるべし。」とかなりしつこく食い下がりました。

 それを受け、再度4月18日の地方創生特別委員会での特区法案審議に際して、本件を取り上げました。今回は答弁を三ツ林厚生労働政務官にお願いしました。質疑自体はココの28:25ぐらいからです。

【4月18日地方創生特別委員会議事録(抜粋)】
○緒方委員 基準を、一対三を見直さなくてもやれると。それはやれるんです。それは、やりたければどうぞの世界でありまして、ロボットを使いたければどうぞということなんですが、こういうものは、何らかの経済的なインセンティブが働かない限りは、なかなか導入をすることができないというか、そういうものが進んでいかないんですね。
 やりたければどうぞというのは、それはやればいいわけです。けれども、そうじゃなくて、やはりこういったものが進んでいくためには、今言ったように、一対三が、一人プラスロボットで四ということになると、ああ、それであればロボットを導入してみようかなというインセンティブが働くわけですよね。
 基準を見直さなくても実証実験することができる、そんなのは当たり前なんです。そんな当たり前のことではなくて、インセンティブを働かせることがない限りは、仮にこれが全国展開するには時間がかかると思いますけれども、そもそも経済的なインセンティブがないものというのは広がっていかないです。
 なぜ、その経済的インセンティブを、実証実験でやってみようというその取り組みを、かたくなに厚生労働省は否定するんでしょうか。厚生労働省。

○三ッ林大臣政務官 お答えいたします。
 職員の業務負担軽減などを通じた介護現場での生産性向上の推進に資するよう、介護ロボットの導入促進は重要と考えております。
 このため、平成二十七年度補正予算におきまして、介護施設で介護従事者の介護負担を軽減する介護ロボットを導入する費用の助成を行うとしております。
 こうした取り組みに加えまして、将来的には、基準の見直しによる対応も念頭に置いて、現場のニーズも踏まえ、介護ロボットの導入による介護職員の業務負担軽減や業務の効率化などへの効果検証を検討していくこととなってまいります。
 今後とも、介護サービスの質の向上や生産性向上を図るため、介護ロボットのさらなる普及促進を進めてまいりたい、そのように考えております。
【議事録終わり】

 かなり前進しました。三ツ林政務官からは「基準の見直しによる対応も念頭に置いて」という言質がありました。その後の質疑でも、「北九州市はロボット技術が進んでいるということは当然承知しております。そして、介護現場にロボット技術を導入すること、そういったことで、介護士の今の現状、不足している点、そして、ただ、人の命を預かるわけですから、その辺を十分考慮して、前向きに検討してまいりたいと思います。」とかなり前向きに検討する旨の答弁が返ってきました。

 正直、嬉しかったですね。少し風穴が空いたと思いますので、これをきっかけに北九州市と厚生労働省で話を進めてほしいと思います。質疑でも言いましたが、どんなロボットでもOKというわけではありません。1+ロボットで4人のお世話をしてもいいような仕様のロボットとはどういうものなのか、どういうケースでならOKなのか、そういう詰めは当然必要です。

 こういう話は与党も野党もありません。実際、質問中、与党からも「面白いテーマだねぇ。」と助言がありましたし、同じ北九州市選出の山本地方創生特委員長からも温かく対応していただきました。

 あまり目立たないテーマですけど、こういう話も頑張っていきたいと思います。