南沙諸島の幾つかの環礁周辺で、米海軍が巡回活動をしていることが米中間で問題になっています。アメリカの主張は「巡回している地域は公海である。領海を主張できる島等は無い。」ということです。私もそう思います。

 私は平和安全特別委員会の審議の最中から、間違いなくこの話は大きくなると読みを入れていたので、南沙諸島の法的ステータスについて質問しています。

【衆議院平和安全特別委員会(6月29日)】
○緒方委員 (略)今、中国が三千メートル級の滑走路をつくっているファイアリークロスリーフとか、レーダーサイトを置いているスビリーフという環礁がございます。報道等、さらには研究者の情報を総合すると、あれは低潮高地であるというふうに言われておりますが、その認識でよろしゅうございますでしょうか。では、外相でも。

○岸田国務大臣 委員も御案内のとおり、国際海洋法条約の上において、海洋は、公海、排他的経済水域、領海あるいは内水、こうした海域に区別されます。
  そして、御指摘の点がこのどれに当たるかという点につきましては、南シナ海の状況について、現状どういった状況になるのか。低潮高地であるのか、それとも高潮時においても水面に頭を出している土地であるのか、こういったことについて我が国として正確に把握することができない、こういった状況にあります。
  ですから、御指摘の点についてどう判断するのか、我が国として判断する材料を持っていないというのが現状であります。

○緒方委員 本当にこれは把握していないんでしょうか。
  実際に、低潮高地ですと領海を持たないんですね、領海を持たない。今、中国がばんばんと建物をつくっていますけれども、人工物を幾らつくろうとも、別にその環礁の国際法上の法的地位というのは変わらないわけでありまして、これが低潮高地であるか、それとも潮が満ちているときに頭が出ているかどうかというのは、その後のさまざまな警戒監視活動においてとても重要なポイントだというふうに思うわけですが、いかがでございますでしょうか、大臣。

○岸田国務大臣 おっしゃるように、国際法上、高潮時において水面上にある地形、これは領海を有します。一方、高潮時には水中に没する地形は、原則として領海は有しないものであります。さらには、人工島は島の地位を有さず、領海を有さない、こういった規定になっております。
  ただ、こうした埋め立ての有無等によりこうしたものは影響を受けるものではないとされておりますので、現状がどうであったか、これをしっかり把握しなければなりません。
  今、南シナ海においては、中国として七つの地域でさまざまな動きを示しているわけですが、現状が今申し上げたどの形に当てはまるのか、こういったことについて我が国として十分把握できる立場にありませんので、これについて明確なお答えをすることは難しいという立場にあります。

○緒方委員 しかし、これから警戒監視活動に対して日本の貢献が求められているというような話もございます。そのときに、その置かれている例えば一つ一つの環礁、ファイアリークロスリーフとかスビリーフとかいろいろございますけれども、その位置づけがはっきりしなければ、本来であれば、国際法上、低潮高地であればその領海を持たないわけですから、その周辺を幾ら通っていこうが、何ら、島に居座っている勢力からけちをつけられる必要は全くないわけでありまして、このことがわからないというのは、これから仮に南シナ海でさまざまなオペレーションを例えば米軍と協力してやっていくときとかに、非常に問題が生じるのではないかというふうに思いますが、この件、お調べになる気持ちがございませんか、外務大臣。

○岸田国務大臣 まず、今申し上げましたように、中国が埋め立てを進めている各地形が高潮時においても水面上にあるか否か、このことについて、我が国として確定的に述べることは困難であるという立場にあります。
  そして、南シナ海の現状について申し上げるならば、南シナ海に領海以外の海域が存在するかという点について、南シナ海全体の地形や広さ、あるいは国連海洋法条約上、領海の幅は十二海里を超えない範囲とされております。こういったことを考えるならば、南シナ海に領海に属さない海域は存在する、このように考えているところであります。
  我が国としまして、南シナ海の法的地位につきましては、今申し上げましたような認識に立っております。
【引用終了】

 今になって、米軍の活動を支持すると表明しています。当然、日本が国際法違法な活動を支持することは絶対にないはずです。であれば、米軍の活動を国際法上合法と判断していることになります。そうであるならば、南沙諸島の幾つかの環礁については低潮高地、あるいはそもそも常時水面下にある(中韓間の蘇岩礁、イオドみたいなもの)だという判断を間接的にしているという事ではないかと思います。その結果、領海に相当する部分は無いということになります。

 始めからこういう事態になることは想定されていたので、平和安全特別委員会でももう少し踏み込んで答弁しておけばよかったのに、と思います。6月29日の時点から4か月、少なくとも南沙諸島の法的ステータスについて何らかの新しい発見があったとは思えないのですね。