バターについて、近年の品薄が気になったので質問主意書を出しておりました。答弁が返ってきましたので、取り急ぎ気になったことを書いておきます。答弁内容はともかくとして、大半は誠実に答えが返ってきています。そこは農林水産省を評価したいと思います。

【問1】
二千十年以降、一消費者として、ほぼ毎年バター不足が生じているように思われる。二千十年以降、国内におけるバターの需要量、生産量、供給量及び在庫量並びに輸入量について答弁ありたい。

【問1答弁】
平成二十二年度から平成二十六年度までの各年度におけるバターの①需要量、②生産量、③供給量、④在庫量及び⑤輸入量は、生産量及び在庫量については農林水産省の「牛乳乳製品統計」に、輸入量については財務省の「貿易統計」によれば、次のとおりである。なお、需要量については生産量、輸入量及び年度当初の在庫量と年度末の在庫量の差を合算した量を、供給量については生産量及び輸入量を合算した量を、在庫量については年度末の在庫量を、それぞれ記載している。
平成二十二年度①約八万四千トン②約七万トン③約七万二千トン④約二万千トン⑤約二千トン
平成二十三年度①約七万九千トン②約六万三千トン③約七万七千トン④約一万九千トン⑤約一万四千トン
平成二十四年度①約七万六千トン②約七万トン③約八万トン④約二万三千トン⑤約一万トン
平成二十五年度①約七万四千トン②約六万四千トン③約六万八千トン④約一万七千トン⑤約四千トン
平成二十六年度①約七万五千トン②約六万二千トン③約七万五千トン④約一万八千トン⑤約一万三千トン

【問1解説】
定義として、
①=②+⑤+(④´-④)
③=②+⑤
とした上で答弁しています。
平成22年度は12000トンの在庫取り崩し、平成23年度は2000トンの在庫取り崩し、平成24年度は4000トンの在庫積み増し、平成25年度は6000トンの在庫取り崩し、平成26年度はほぼ安定、そんな感じであることが読み取れます。平成23年度、24年度、26年度には追加輸入(緊急輸入)を行っています。

【問2】
一を踏まえ、政府として、バターが不足する原因はどのようなものだと考えているか。年によって原因が異なるのであれば、年毎に分けて原因を答弁ありたい。

【問2答弁】
お尋ねの「バターが不足」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十三年度及び平成二十四年度にバターの追加輸入(加工原料乳生産者補給金等暫定措置法(昭和四十年法律第百十二号。以下「暫定措置法」という。)第十三条第二項の規定による輸入をいう。以下同じ。)を行うこととなった原因は、平成二十三年度に、東日本大震災の影響によりバターの生産量及び在庫量が減少したことであり、平成二十六年度にバターの追加輸入を行うこととなった原因は、当該年度に、国内における生乳の生産量が減少したことにより、バターの生産量が減少したことであると考えている。

【問2解説】
まずもって、「バターが不足」の意味するところが明らかでないと言うのは挑戦的ですが、「不足した」という認識を持っていないのかもしれません。平成23年度、24年度のバター不足は東日本大震災のせい、平成26年度の不足は暑さにより生乳生産が下がったせいと言っています。含意として「だから、政策的に何かが間違っているわけではない。」と言いたいのでしょう。

【問3】
チーズ、脱脂粉乳・バター等に対する補給金の水準をそれぞれ答弁ありたい。また、何故、チーズの方が補給金が高いのか。

【問3答弁】
平成二十七年度のナチュラルチーズ向け及びバター、脱脂粉乳等向け生乳についての補給金単価(暫定措置法第十一条第一項に規定する補給金単価をいう。以下同じ。)は、それぞれ生乳一キログラム当たり十五円五十三銭及び十二円九十銭である。バター、脱脂粉乳等向け生乳についての補給金単価よりもナチュラルチーズ向け生乳についての補給金単価の方が高い理由は、北海道におけるナチュラルチーズ向け生乳の販売価格がバター、脱脂粉乳等向け生乳の販売価格と比べて低いためである。

【問3解説】
国内生産者への補給金はチーズの方がバターよりも高く設定されています。私はまだよく分かっていない所がありますが、この政策結果として、生乳生産者はチーズを志向し、バターが後回しにされたという事実はないのかな、と首を傾げています。

【問4及び問5】
生乳、チーズにおいて特段の品不足が生じているように感じられないにもかかわらず、バターについてのみ不足感を感じる理由は何か。

今年の推定生乳需給における脱脂粉乳・バター等に対する供給については十四万トンの要調整数量を設定しており、必ずしも需要に対する供給が確定的でないこと、また、チーズの補給金が脱脂粉乳・バター等に対するものよりも高いことを踏まえれば、生乳需給においては脱脂粉乳・バター等がその調整弁的役割を果たしているように見えるが、政府の見解如何。

【問4及び5答弁】
バター及び脱脂粉乳は、国家貿易により輸入を行っており、生乳の需給調整の機能を果たしていることから、生乳の需給のひっ迫時においては、飲用牛乳等の生産が優先される結果、国内でバター及び脱脂粉乳が不足することとなる。また、脱脂粉乳はそのほとんどが業務用として使用され、チーズはそのほとんどが輸入品で占められていることから、消費者にとっては、脱脂粉乳やチーズが不足していると感じられず、バターについてのみ不足していると感じられるものと考えている。

【問4及び5解説】
結局、バターは需給の調整弁でして、ここに生乳生産の皺寄せが来るようになっているのです。だからこそ、バターの供給についてはある程度のゆとりと機動性が求められます。そこが足らないのではないかと私は思います。

あと、脱脂粉乳は業務用、チーズは大半が輸入品だから品不足感を実感しないだけ、と言ってしまうのは、かなり雑だなと思います。例えば、本当に脱脂粉乳が不足しているのであれば、コーヒー牛乳(脱脂粉乳使用)の品薄が出てもよさそうな気がします。

【問6】
二千十年以降のバターのカレントアクセス内での輸入、更には追加輸入の実績について答弁ありたい。

【問6答弁】
平成二十二年度から平成二十六年度までの各年度において独立行政法人農畜産業振興機構(以下「機構」という。)が買入契約を締結したバターの①カレント・アクセス輸入(暫定措置法第十三条第一項の規定による輸入をいう。以下同じ。)及び②追加輸入の実績は、農林水産省において把握しているところでは、次のとおりである。
平成二十二年度①約四千トン②なし
平成二十三年度①約七千トン②二千トン
平成二十四年度①約七千トン②二千トン
平成二十五年度①約四千トン②なし
平成二十六年度①三千トン②一万トン

【問6解説】
乳製品については、生乳換算のカレントアクセス枠は13.7万トンでして、一部ホエイを輸入する分を除いて、バターか脱脂粉乳で輸入しています。恐らく平成23年、24年の7000トンは枠一杯すべてバターで輸入しているのでしょう。なお、7000トンのバターとは生乳換算すると8.6万トンになります。
それにしても、平成26年度は枠内輸入は3000トンで押さえているのに、追加輸入が10000トンというのは不思議ですね。脱脂粉乳が不足していたので、そちらの輸入に回したのではないかと推察することも出来ます。
あと、この数字と問1答弁での輸入量の数字が一部合わないのです。枠外輸入がそんなにあるのかなと思ったりします。

【問7】
二千十年以降のバター、脱脂粉乳それぞれの輸入における各年のマークアップの総額、平均水準について答弁ありたい。

【問7答弁】
平成二十二年度から平成二十六年度までの各年度におけるバター及び脱脂粉乳それぞれの輸入に係る①マークアップ(カレント・アクセス輸入及び追加輸入に伴い機構が得る売買差益をいう。以下同じ。)の総額及び②一キログラム当たりの平均額は、農林水産省において把握しているところでは、次のとおりである。なお、マークアップの総額については機構による売渡しの価格の総額と買入れの価格の総額との差額を、一キログラム当たりの平均額についてはマークアップの総額を機構による売渡しの数量で除した額を記載している。
バター
平成二十二年度①約一億円②約七十七円
平成二十三年度①約六十四億円②約四百六十九円
平成二十四年度①約六十一億円②約六百四十九円
平成二十五年度①約十億円②約二百八十四円
平成二十六年度①約八十四億円②約六百四十八円
脱脂粉乳
平成二十二年度①約三千万円②約三十二円
平成二十三年度①なし②なし
平成二十四年度①なし②なし
平成二十五年度①約四億円②約八十八円
平成二十六年度①約五十三億円②約二百三十八円

【問7解説】
マークアップというのは、乳製品については、まず、脱脂粉乳については25%、バターについては35%の関税を付けた上で、農畜産業振興機構が一度すべてを買い取る形になります。そして、それにマークアップと言われる売買差益をくっ付けて業者さんに売り渡します。
追加輸入した年は、マークアップ収入がかなり上がっていますね。農畜産業振興機構の収入が跳ね上がっています。しかも、追加輸入した年ほど、マークアップの水準が高いです。理由についてはもう少し研究したいと思います。

【問8】
追加輸入が恒常化しているということは、WTO協定締結時に設定されたカレントアクセスによる数量が十分ではないのではないか。

【問8答弁】
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、お尋ねの「カレントアクセスによる数量」は、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号)附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表に規定されており、昭和六十一年度から昭和六十三年度までの三年間の輸入実績を基に定められたものである。バター及び脱脂粉乳については、同協定に従って輸入されており、これらが国内で不足し更なる輸入が必要と判断される場合には、追加輸入を行うこととしている。

【問8解説】
ここは最後の〆の質問でしたが、ここだけは真正面からの答弁がありませんでした。基本的に「政策の瑕疵はない」からスタートしている以上、こういう答弁になるのでしょう。

 長々と書きましたが、何となく概要が見えてきたような気がします。そして、問題点も。