今、注目を集めている南沙諸島についても議論がありました。

 南沙諸島においても重要影響事態(我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態)や存立危機事態(我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が我が国の存立を脅かす事態)はあり得るかという問いについては、重要影響事態についてはあり得るという答弁でして、存立危機事態については、法的にはあり得るけども、ホルムズ海峡とは違って迂回路があるからあまり想定されないのではないか、みたいな答弁がありました。どうもこの辺りもスッキリしない答弁が続きました。

 ただ、一般論として言えば、南沙諸島で重要影響事態が起きる時というのは、相当に危機の度合いが高まっていると見るべきであって、存立危機事態が起きる時は第三次世界大戦を想像させます。それよりも、もう少し具体的な例で検討すべきです。

 私が国会で質問したのは、南沙諸島で中国が滑走路を造っているファイアリー・クロス・リーフ、レーダーを置いているスビ・リーフ等は、島なのか、低潮高地なのかということでした。島であれば領海のみならず、排他的経済水域を有します。逆に干潮時にしか頭を出さない(満潮時は沈んでしまう)低潮高地ならば(一定の例外を除けば)領海を有しません。それはどんなに人工物を環礁の上に作ろうとも同じです。

 このステータスの違いによって、対応が異なるのはご理解いただけるでしょう。中国の領有を認めるかどうかは脇に置いたとしても、そもそも、これらの環礁が領海を有しないのであれば、近隣を通過する船には国連海洋法上の無害通航を要求されることもありませんし、そもそも、その近辺で米軍、自衛隊等が警戒監視活動をすることは本来、誰にも文句を言われる筋合いはありません。

 なので、私や長島昭久議員から何度かこれらの環礁のステータスについて聞きました。今やこれらの環礁については巨大な人工物が建造されているので、外形的に見ても分からないのです。過去の様々なデータを駆使して判断するしかありません(そういう研究は存在します。)。しかし、外相の答弁は「承知していない」でした。対中配慮なのかもしれませんが、かといって、今後重要影響事態になるかもしれない場所の国際法上のステータスを確認できないというのは、海自のオペレーションに差し支えると思うのです。この点は与党議員からも「良い指摘だ」と言われています。

 なお、米海軍からは「これらの環礁の12カイリ以内でも警戒監視活動をやる」というような発言があったと記憶しています。その根拠となり得るのは「これらの環礁が低潮高地に過ぎない」ということです。

 あと、私が気になったのは、海自がやれるメニューで欠けている部分がないかなということでした。まず、平時の公海における警戒監視活動については、自衛隊法の調査研究という一般的な根拠規定でやれるとの解釈になっておりますので法改正は必要ありません。なので、米軍と共に警戒監視活動をやる事は出来ます(その際の武器等防護(米艦護衛)の問題があるのですけど、これは別途稿を改めます。)。

 私が気になっているのは、今次改正で米軍サポートのメニューが拡大される中、例えば、平時に南沙諸島周辺で警戒監視活動をしている米軍艦船への給油を行うことが入っていないのです。米軍と海自が一緒に警戒監視活動をしているのであれば相互融通で給油することは可能になっていますが、給油活動そのものを目的として海自が米軍に補給することは出来ません。答弁では「そういうニーズはない」と言っているのですが、インド洋での給油活動の実績がある中、こういうことも盛り込んでおけばいいのに、そういう要望が来たらどうするんだろう?と思いました。「Think the unthinkable」じゃなかったのかな、今回の法制は、と思うのですけどね。

 大体、こんな問題意識を持ってやっていました。対中配慮がとても見え隠れする質疑が多かった印象です。