集団的自衛権の議論で隔靴掻痒の感があるのは、邦人救出の米艦防護とホルムズの機雷掃海の2例しか挙がってきていないからです。このテーマには「隠れた主役」がいます。

 それが台湾有事、朝鮮半島有事です。ただ、いずれもそれを想定した議論を提起してしまうと、その議論自体が国際問題になるということだと思います。まずは周辺事態法で対応するのでしょう。それが発展して日本への武力攻撃ということになれば武力事態法で対応するのでしょう。

 しかし、武力事態法の想定する事態に発展しないことだってあり得るわけであって、その時にでは、周辺事態法の範囲内で対応していれば足りるかどうか、という議論が必要です。周辺事態法の中身を詰め込むは必要ですが、あれはあくまでも後ろからのサポートです。オペレーション本体に出ていかなくていいのか、という議論を意図的に避けているところがあります。

 実は集団的自衛権の議論で、最重要な質問というのは「(個別的自衛権を行使し、日本に集団的自衛権行使の要請をしてくる)密接な関係にある他国」に台湾は含まれるか、ということではないかと思います。これは「一つの中国」政策を採る中国との関係で非常に微妙な原理原則の問題があります。

 この関係では、周辺事態法の時の議論が思い出されます。外務省北米局長が、「周辺」の定義は「概念的に極東の範囲を超えることはない」という趣旨の答弁をして、当時の橋本総理の逆鱗に触れて更迭されたことがありました。周辺事態法自体が日米安保条約の枠内でやっている以上、答弁自体は正しいのですけども、中国との関係では「周辺に台湾を含む」となってしまうことはとても機微であって、なかなか扱いが難しいのです。

 辛いところですけども、本丸での議論をしなくてはいけませんね。