水曜日09:30-10:00外務委員会で質問しました。日モンゴル経済連携協定、WTO貿易円滑化協定等4条約の審議でした。映像(ココ)は、Windows MediaPlayerです。

 冒頭から暫くは「自由貿易協定講座」みたいなものでして、FTA、EPA、TPPを理解する基礎が分かるように出来ています。大体、こんな感じの問題意識を持ちながらのやり取りです。どちらかといえば、お役所の方に好評な質疑でした。

- 本来、世界の貿易ルールは、GATT第1条の最恵国待遇(ある国に関税を下げたらすべての国に下げる)。
- 何故、特定の国に関税を下げる経済連携が認められるかといえば、それはGATT24条の規定で自由貿易協定が認められているから。それはFTA、EPA、TPPといった呼称に関係がなく、同じ根拠規定。
- GATT24条では、自由貿易協定においては、実質的にすべての貿易について関税及びその他の制限的通商規則を撤廃することが求められている(ただ、元々この規定は現在のような自由貿易協定が百花繚乱の時代を想定していなかったのではないか。)。
- 例外が認められるのは、「実質的に」という言葉から例外を推定しているだけ。日本は概ね金額ベースで90%の撤廃率を目標としてきた。ただし、品目ベースで計算するやり方もある(一般論として、その方が厳しい。)。
- 議題となった日モンゴル経済連携協定では、まぐろ、にしんといった生魚すら関税が撤廃されない。内陸国でそれらの生魚が絶対に捕れない場所ですらこの対応。日本の自由貿易協定は一般論として目指すものが低い。
- 途上国は、関税撤廃率が高くない自由貿易協定でも容認されており、一部の国はそういうものに慣れている。そういう国との自由貿易協定と、(GATT24条による厳しい撤廃が科される)先進国との自由貿易協定では、その厳しさが違うのは当たり前。途上国相手の二国間のEPAだと楽が出来て、先進国、特にアメリカ相手のTPPだと厳しいというのはむしろ当然。

 それから、同じく議題に上がったWTO貿易円滑化協定に絡めながら、以下の様な事を聞きました。

- 貿易円滑化協定というのは、税関実務の円滑化であり、極めて実務性の高いもの。あまり難易度が高くない。それにも関わらず、WTOドーハラウンド交渉が始まって14年経っての唯一の成果。この程度の事でも14年掛かることを踏まえれば、今後、WTOを通じた世界全体の自由化を進める貿易ルールの将来はどうなっていくのか。
- 昔はWTOが基礎にあり、自由貿易協定はその補完的な例外と位置付けられていた。ただ、最近思うのは、実はその貿易ルールのパラダイムが大きく転換して、WTOによる世界全体の自由化の機運が下がり、自由貿易協定のネットワークそのものが世界の貿易ルールの基礎を作っているとすら見る事が出来る。WTOと自由貿易協定の関係をどう考えるか。

 その後、33:20くらいからは、2010年の自民党ペーパー2012年の城内副大臣ペーパーの2つのペーパーを中心に、TPPについて、自由民主党、城内外務副大臣のポジションを質問をしました。

 自民党ペーパーについては、主たるテーマはISD条項です。この辺りは、TPP反対派の方によく見てほしい部分です。簡単に言うと、自民党が「国の主権を損なうようなISD条項には反対」というのは、決して「ISD条項には反対」ではなくて、「ISD条項の中に、仮に主権を損なうようなものがあるとすれば反対」というだけです。TPP反対派の方は、「自民党はISD条項に反対している」と読んだ方がかなりおられましたが、それは読み方が間違っていたということです。

 城内副大臣とのやり取りは、資料を参照の上、そのまま映像を見ていただければと思います。私から付言することはいたしません。

 最後に、51:40くらいからTPP交渉との関係で、アメリカの輸出信用は輸出補助金の要素があるのではないか、そういう輸出信用が付された農産品に対して、日本が関税を撤廃するのは不公平ではないかという問いでした。ここはTPPとの関係でとても重要なポイントの一つです。農業関係者の意識も最近高まってきています。仕方ないこととはいえ、小泉政務官は口が重そうでしたね。

 1時間みっちりと質問させていただきました。全体として言えば、前半はアカデミック系(学部生から修士くらいの方向け)、後半はメディア向け、最後の所は非常に交渉の渋い所を突いた、そんな感じでしょうか。