ある国務大臣経験者がとても面白いことを言っていました。それは「究極の行政改革とは『補正予算をやらない』ことだ。」ということでした。私も頷くところがありましたが、これだけですと意味が分からないと思いますので、少し噛み砕きます。

 まず、財政法で補正予算の規定を見てみたいと思います。

【財政法抜粋】
第二十九条    内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を作成し、これを国会に提出することができる。
一   法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となつた経費の支出(当該年度において国庫内の移換えにとどまるものを含む。)又は債務の負担を行なうため必要な予算の追加を行なう場合
二   予算作成後に生じた事由に基づいて、予算に追加以外の変更を加える場合

 しかしながら、近年、この規定は形骸化しています。今年度の補正予算審議でも大いに取り上げられましたが、経常経費そのものが補正予算に計上されていたり、元々継続事業でやっているものが盛り込まれていたりします。本来、来年度の当初予算に盛り込むべきもののオンパレードです。したがって、年度内使用が出来ず、繰り越してしまいます(3月下旬になると、繰越の手続きでお役所は大忙しです。)。

 補正予算を基本的に認めず、本当に緊要性の高いものだけに限定するという原則にもう一度立ち返ると色々な効果が出ます。

 当初予算では計上を抑え込んで、各省庁が要望する追加分は補正で面倒を見るという手法が結構横行しています。近年はそれがスタンダードにすらなりつつあります。それによって、プライマリーバランス達成が当初予算ベースでは達成されるように見せることもできます(補正を組むと悪化する。)。しかし、そういうことを続けていると、当初予算の査定に真剣味が欠けてしまいますし、決算ベースでのプライマリーバランスが結構いい加減に取り扱われてしまいます。玄関(当初予算)は綺麗になったけど、裏口(決算)を見ると結構ヒドいというのが現状です。

 補正予算を基本的にはやらない、という前提に立ち、当初予算作成においては「一発勝負」を徹底すれば、当初予算策定段階で本当に必要な予算計上に向けて厳しいやり取りになるでしょう。そして、決算ベースでもプライマリーバランスが実現するという本来望ましい姿にも近づくと思います。

 当初予算の厳しい縛りの抜け道としての補正予算が、財政制度の中に当然のように組み込まれていくことは避けるべきです。それは日本の行政機関の考え方を大きく変えることになるでしょう。