この質問に対して、答弁書が返ってきました。

【答弁】
一から三までについて
お尋ねの「主張できる権原は国連海洋法条約第五十七条によるもの」及び「主張できる権原は国連海洋法条約第七十六条の定義に基づくもの」の意味するところが必ずしも明らかではないが、沿岸国は、当該沿岸国及び当該沿岸国の海岸と向かい合っている海岸を有する他国のそれぞれの領海の幅を測定するための基線(以下「領海基線」という。)の間の距離が四百海里未満の場合、当該他国との間における排他的経済水域又は大陸棚の境界画定について当該他国との合意に達するまでの間、御指摘の海洋法に関する国際連合条約(平成八年条約第六号。以下「国連海洋法条約」という。)第五十七条又は第七十六条を含む関連する国際法に基づき、当該沿岸国の領海基線から二百海里までの排他的経済水域及び大陸棚についての権原を有する。我が国は、関連する国際法に基づく当該権原を踏まえ、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律(平成八年法律第七十四号)第一条及び第二条において、我が国が国連海洋法条約に定めるところにより国連海洋法条約第五部に規定する沿岸国の主権的権利その他の権利を行使する水域である排他的経済水域及び我が国が国連海洋法条約に定めるところにより沿岸国の主権的権利その他の権利を行使する大陸棚をそれぞれ定めている。なお、これらの規定は、我が国及び我が国の海岸と向かい合っている海岸を有する外国のそれぞれの領海基線の間の距離が四百海里未満の場合、当該外国との間における排他的経済水域又は大陸棚の境界画定について我が国が当該外国と合意に達するまでの間、我が国の領海基線から二百海里までの排他的経済水域及び大陸棚について我が国が関連する国際法に基づき有する権原に何ら影響を与えるものではない。

 これ自体はその通りなのです。そうでないとおかしいのです。何故、このような質問をしたかというと、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律を読んでみると、本当にそうなのかという疑問を持つからです。

 大陸棚を例に説明してみたいと思います。

【排他的経済水域及び大陸棚に関する法律】
第二条   我が国が国連海洋法条約に定めるところにより沿岸国の主権的権利その他の権利を行使する大陸棚(以下単に「大陸棚」という。)は、次に掲げる海域の海底及びその下とする。
一   我が国の基線から、いずれの点をとっても我が国の基線上の最も近い点からの距離が二百海里である線(その線が我が国の基線から測定して中間線を超えているときは、その超えている部分については、中間線(我が国と外国との間で合意した中間線に代わる線があるときは、その線及びこれと接続して引かれる政令で定める線)とする。)までの海域(領海を除く。)
(以下略)

 これを読むと、普通には(領海基線間が400海里未満の)日中間の大陸棚で日本が主張できるのは「中間線まで」というふうに思えてしまうわけです。権原として「200カイリ」を主張する可能性が読み込めないような気がするのです。

 これは日中間の大陸棚で、中国が(中間線を超えて)沖縄トラフまでを主張していることとの関係で問題があると思います。日本が中間線を主張し、中国が沖縄トラフまでと主張していると、国際司法裁判所ではその間で解決が図られることが多いです。それだと、中間線よりも日本寄りで解決することになります。国際司法裁判所で争うことはないかもしれませんが、争う時には国内法が根拠として取り上げられます。それは危険なことです。

 政府は「これらの規定は(略)、我が国の領海基線から二百海里までの排他的経済水域及び大陸棚について我が国が関連する国際法に基づき有する権原に何ら影響を与えるものではない。」と言っていますが、それが法律上担保されていなければ、非常に宜しくないと思いますし、私の頭で考えてもそういうことが明示的に担保されていないのではないかという問題意識です。

 日中間の大陸棚の話は少し下火になっていますけど、今の内に国内法上、200カイリを権原として有することをきちんと明示する法整備をした方がいいと思っています。