非常に技術的で分かりにくい、この2つの質問主意書。いずれも農政絡みです。答弁が返ってきたので、出来るだけ具体的事例に即して解説していきたいと思います。

【質問】
我が国が行っている国家貿易については、すべて関税と貿易に関する一般協定(GATT)第十七条の規定に従っているか。世界貿易機関を設立するマラケシュ協定発効前のGATTの時代も含めて、我が国の国家貿易企業とGATT第十七条との関係について答弁ありたい。

【答弁書】
政府としては、我が国が行ってきている国家貿易は、関税及び貿易に関する一般協定第十七条の規定に整合的であると考えている。

【質問】
GATTウルグアイ・ラウンドの結果、締結されたWTO農業協定においてはカレント・アクセス、ミニマム・アクセスといった枠組みが設けられ、それに基づき、関税割当による輸入が行われている農産品がある。この関税割当の枠内運用に関し、WTO協定上、輸入された品目には最恵国待遇、内国民待遇は確保されなくてはならないと解釈しているか。

【答弁】
世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号)附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定(以下単に「協定」という。)に附属する第三十八表において関税割当てを行うこととされている農産品に対する関税割当ての運用については、協定第一条及び第三条の規定を遵守している。

【解説】
 これだけだと、何のことやらさっぱり分かりませんね。小難しくてすいません。

 日本には、国家貿易というスタイルで、国家が独占的に輸入している品目がまだ幾つかあります。農林水産省による米、麦、農業産業振興事業団による生糸、指定乳製品等です。

 最初の質問で何を聞いているかというと、GATTという条約の第十七条に、この国家貿易に規定がありまして、簡単に言うと「国家貿易は、商業的考慮のみに基づいてやらなくてはならない。」と書いてあります。最初の質問はアホみたいなものでして、「米、麦、生糸、指定乳製品等の輸入は、商業的考慮のみに基づいてやっていますか。」というふうに言い換える事が出来ます。

 勿論、「やってません」と答えるはずもなく、「その通りやっています」という答弁です。

 二つ目の質問ですけど、これは最初の質問の続きです。これらの米、麦、生糸、指定乳製品等の輸入については、輸入枠(関税割当て)を設定しています。一定の数量のみ低関税で輸入して、それ以上については(輸入することが困難だと思われるくらいの)高関税を設定しています。

 その上で、これらの産品については、最恵国待遇(特定の国だけを優遇しない)、内国民待遇(輸入後は国産品と同等の扱いをする)を確保した上でやっていますか、というのが二つ目の質問です。答えは(分かりにくいですけど)、「その通りやっています」です。

 コメの輸入について、これらをすべて纏めてみると、以下のように噛み砕けます。

● コメの輸入は、商業的考慮のみに基づいてやっている。
● 輸入元に応じて、特段の優遇はしていない。
● 輸入した後は、国産品と同等の扱いをしている。

 農業関係者や通商関係者の方々が読んでみて、どう思われるでしょうか。ちょっと首を傾げる方も多いのではないでしょうか。

 初めから答えは分かっていたのですけども、きちんと答弁書で取っておきたかった事例です。これをベースにあれこれと質問を考えていきたいと思います。