日本の在外公館、増えてきたなあという印象があります。

 私が1997-1999にアフリカ在勤時は、アフリカには22しか在外公館がありませんでした。私が勤めていたセネガル大使館はモーリタニア、マリ、カーボヴェルデ、ガンビア、ギニアビサウと5つも兼轄公館がありました。兼轄国に行くのは楽しくて、私は担当だったマリ共和国に1ヶ月に1回のペースで行っていました。経済協力関係でこの世界遺産にも行きました。私の行った世界遺産の中で、最も難易度の高い場所です。

 二等書記官でしたが日本を代表していくわけですから、責任重大でして、カウンターパートは基本的に次官クラスでした。私の後輩はギニアビサオに出張に行ったら、首相と会談する機会があったそうでして、ちょっと普通では考えられない経験です。

 ただ、兼轄国ですからどうしても外交上の働きかけとかは難しいことがあります。大使館ネットワークが充実している中国との関係で、(詳細は書けませんけど)在外公館がない悲哀を味わったこともあります。中国は対台湾対策で、基本的に国交関係がある国には大使館を置いています。マリでは当時から中国のプレゼンスをよく感じたものです(マリ外務省は中国政府による建設だと言っていました。)。

 ということで、現在、大使館が存在しない国を調べてみました。

【アジア】ブータン、モルディブ
【大洋州】キリバス、サモア、ツバル、ナウル、バヌアツ
【中南米】アンティグア・バーブーダ、ガイアナ、グレナダ、スリナム、セントクリストファー・ネーヴィス、セントビンセント、セントルシア、ドミニカ、バハマ、バルバドス、ベリーズ
【欧州】アルバニア、アンドラ、キプロス、コソボ、サンマリノ、マケドニア旧ユーゴスラビア、マルタ、モナコ、モルドバ、モンテネグロ、リヒテンシュタイン
【アフリカ】エリトリア、カーボヴェルデ、ガンビア、ギニアビサウ、コモロ、コンゴ共和国、サントメ・プリンシペ、シエラレオネ、スワジランド、セーシェル、赤道ギニア、ソマリア、チャド、中央アフリカ、トーゴ、ニジェール、ブルンジ、モーリシャス、リベリア、レソト

 この他にも、実際に大使館があるのですが、正式な機構上の大使館ではない、ハイチ、タジキスタン、トルクメニスタン、ソロモン、ベラルーシといったケースもあります(見落としがあるかもしれません。)。

 そんな中、来年度予算要求でタジキスタン、トルクメニスタン、バルバドス、モルディブ、ソロモン、モルドバの新設が認められました。ちょっと日本と縁遠い国ですけども、個人的にはタジキスタン、トルクメニスタンはプライベートで行ったことがあるので、「ああ、遂にドゥシャンベ(タジキスタン)、アシハバード(トルクメニスタン)にも正式に大使館が立ち上がるのか。」と感慨深いものがあります。ロシアの「柔らかい下腹部」と言われ、中国も非常に神経を使う中央アジアにはきちんと日本のプレゼンスを確保すべきです。

 ただ、これからはどんどん難易度が上がっていきます。残された国を大きくパターン分けすると、(1) 島嶼国、(2) 小さい国、(3) 治安が悪い国です。上記のかなりの国はこのカテゴリーに入りそうです。

 そんな中、アフリカですと次に有望なのはニジェール、チャド、コンゴ共、トーゴ、ブルンジあたりかなと思います。特に昔から青年海外協力隊員が入っているニジェールなどは優先してもいいように思います。欧州ですと、そろそろマケドニア、コソボ、モンテネグロの辺りとか、EU加盟国であるキプロス、マルタあたりは有力でしょう。あと、アジアの残されたシャングリ・ラであるブータンなんかも、ワンチュク国王の国賓訪日で注目度が上がっており大事にしたい国です(が、ブータンには殆ど外交団が居ません。)。なお、残念ながら中南米、大洋州は土地勘がないのでよく分かりません。

 なんだかんだで、どの国も国連では一票です。大使館があるかないかでは、その国への外交的アクセスがかなり違います。予算厳しき折ですが、日本外交の足腰ということで応援したいと思います。