中国漁船によるサンゴ密漁を踏まえて、排他的経済水域で船舶を拿捕した際の担保金や領海内での拿捕の罰金・罰則の金額を上げようとする動きが出てきています。

 正直なところ、「遅いよ」という気分です。それは与野党問わずでして、私が現職時代(3年前)にブログで書いた内容(ここでは島根沖の韓国漁船を対象に書いていますが)がかなり妥当すると思います。この内容、幾つかの場で主張しましたが、殆ど誰も関心を持ってくれませんでした(今、自民党に行ってしまった長尾さんが「林ちゃん、これは良い指摘だ。」と言ってくれたくらいです。)。

 まず、排他的経済水域での担保金制度、元々は国連海洋法条約に起源があります。

【国連海洋法条約第73条(沿岸国の法令の執行)】
1 沿岸国は、排他的経済水域において生物資源を探査し、開発し、保有し及び管理するための主権的権利を行使するに当たり、この条約に従って制定する法令の遵守を確保するために必要な措置(乗船、検査、拿捕及び司法上の手続を含む。)をとることができる。
2 拿捕された船舶及びその乗組員は、合理的な保証金の支払又は合理的な他の保証の提供の後に速やかに釈放される。
3 排他的経済水域における漁業に関する法令に対する違反について沿岸国が科する罰には、関係国の別段の合意がない限り拘禁を含めてはならず、また、その他のいかなる形態の身体刑も含めてはならない。
4 沿岸国は、外国船舶を拿捕し又は抑留した場合には、とられた措置及びその後科した罰について、適当な経路を通じて旗国に速やかに通報する。

 簡単に言うと、排他的経済水域で拿捕してもカネ払ったら基本的には釈放しなくてはいけない、拘禁刑は事前方位が必要であって、身体刑は絶対にダメ、そういう内容です。ここでいう「保証金」が、日本で言うところの「担保金」です。

 ただ、ロシアに拿捕された日本漁船は保証金で吹っかけられています。上記の引用ブログに書きましたが、1億円くらい吹っかけられて、交渉に交渉を重ねてようやく5000万円程度で釈放です。その間は限りなく拘禁に近い状態に置かれています。

 それとの見合いで行くと、日本の担保金が上限1000万円というのは如何にも安すぎます。しかも、運用上はかなり低額の担保金で釈放されています(担保金の額は非公開)。報道によれば、排他的経済水域での無許可操業では概ね400万円程度と言われています。

 領海内での拿捕については、3年以下の懲役か400万円以下の罰金が科されます。考えようによっては、排他的経済水域での担保金上限1000万円よりも軽いと考えることすらできるわけです。罰金であるか、担保金なのかなんてことは、外国人密漁者にとってはどちらでもいいことなのですから、かなり違和感があります(勿論、領海内の場合は刑事裁判になるため時間が掛かり、カネを払えば即釈放とはいきませんけど。)。

 素直に、排他的経済水域での担保金、領海での罰則、罰金についてはそれを強化する方向でやるべきです。といっても、法改正には時間が掛かりますから、仮に今国会で突貫工事でやったとしても現状のサンゴ密漁には対応できない可能性が高いです。

 単なる個々の船による密漁の損害を真面目に計算するのではなく、そういう状態が放置されることによる損害全体を計算に入れて、拿捕されたら目の玉が飛び出るような担保金や罰金にするのが良いのではないかと思います。