地元回りをしていて、集団的自衛権についてよく言われるのが「よく分からない」ということです。この「よく分からない」はかなり広く共有されており、そうそう簡単に解消されるような感じを受けません。


 私は地元での集会等で色々と試行錯誤しながら説明するようにしています。外務省条約課経験者としては、細部がとても気になるのではありますけども、一例としてこんな言い方をしています。これでもまだ不十分だと思います。


● 個別的自衛権というのは「人から襲われた時にそれをはねのける行為」、人間様が「正当防衛」をするのと同じ。それに対して、集団的自衛権というのは「友達が襲われている時に助太刀に行く行為」。


● 何故、安倍さんが今回の集団的自衛権をやろうとしたかというと、「友達と二人で歩いていて、目の前から不良が来た。自分が殴られた時は、隣の友人に助けに来てほしいけど、友人が殴られている時には助太刀には行かない。」ということへの懸念。つまり、今回の集団的自衛権の議論の発端は「友達甲斐がないじゃないか」というところにある。


 ところで、どんどん事例研究を進めていけばいいと思うのです。なかなか事例を作るのは難しいのです。今は集団的自衛権を正当化するような事例が出てきていますが、もっともっと多種多様な事例を挙げていけばいいと思います。


 「よく分からない」という方の理解に資するかどうかはともかくとして、こういう時は過去の事例でどうなるかというのが一番やりやすいです。なお、「今回の閣議決定で定められた後方支援」とは「現に戦闘行為を行っている現場以外の場所での様々な補給、支援活動」を想定しています。


・ 以下の事例で、今回の閣議決定で定められた後方支援は可能か。

- 1996年イラク空爆時: 直接の国連安保理決議なし。ただし、過去の安保理決議を引用し正当化。

- 1998年イラク空爆時: 直前の国連安保理決議は明確に攻撃を容認したわけではないが、クリントン政権はそれを引用。国連事務総長や理事国の大多数が懸念を表明。

- 1999年コソボ空爆時: 決議なし。

- 2003年イラク戦争時: 決議なし。


・ 2001年、アメリカが「9.11」に対する自衛権発動でアフガニスタンを攻撃した際、(1)集団的自衛権発動は可能か、(2)今回の閣議決定で定められた後方支援は可能か。


 その他にもたくさんの事例があります。特に研究する価値が高いのは、国際司法裁判所の「ニカラグア事件判決」 です。多分、このICJ判決の内容と閣議決定との間にはかなりの隙間があります。私ももう少し勉強してみます。


 事例研究をしていく上で、「何が可能で何が可能でないのか」というのを明確にしていく必要があります。ある現職議員が言っていましたけど、今は「何が可能かがよく分からない」モノ(閣議決定)に対して、「立場がよく決まっていない」側(野党)が攻め立てようとしているということでして、「不明確なもの同士の戦い」になっています。そんな論戦が不毛であることは明らかです。


 今、野党がやるべきは「立場を(レトリックでなく)明確にすること」と「今の閣議決定でよく分からない所を明確にすること」です。どちらが先かというのは「鶏と卵」の議論ですが、議論をしていけば自ずと収斂していくでしょう。