イラク情勢が混迷を極めています。元々が人工国家の要素があり、とてもとても雑に言えば、北部クルド人(スンニー派)、中部アラブ人(スンニー派)、南部アラブ人(シーア派)という感じなのを、サッダーム・フセイン時代は強権で抑え込んでいたわけですが、完全にくびきが解き放たれましたね(別にサッダーム時代を礼賛しているわけではありません。)。


 あまり指摘されませんが、北部で駆逐されている地域はクルド人の多い地域の割に、現状についてクルド人勢力からの声が殆ど聞こえて来ません。私の情報量が少ないせいかもしれませんけど。話が飛びますが、クルド人と言えばこの本 です。


 イラク情勢そのものは、混迷に混迷を極めているのであえてコメントしませんけども、いつも思うのが「カネを出しているのは誰だ?」ということです。日本の報道でも、「湾岸諸国のオイルマネーが流れ込んでいる」くらいのことは言っています。サウジアラビア、カタール、UAEあたりが臭いですかね。


 昔、私が外務省で湾岸諸国担当課の課長補佐をやっていた時代から、「アフガニスタンのタリバーンにカネを出しているのは、どうも●●国の○○王子っぽい。」というのは、何となく言われていました。外務省というと、よく情報収集能力をあれこれ言われますが、アラビア語やペルシャ語を専門にする方の中には恐ろしいまでの能力の人がいました。これらの方々は日本の財産だと思います。


 「(アメリカ軍が訓練した)イラク正規軍を駆逐するだけの重火器」というのは、そうそうお安いものではありません。かなりのカネがないと、あの破竹の進撃は無理です。かといって、ISIS(イラクとシャームのイスラム国)にそれ程の現実的な収入源があるわけでもありません。間違いなく、厳格なスンニー派イスラムを信奉する勢力からのカネの動きがあるはずです。


 しかも、それは日本円で言うと「億単位」でしょう。もっと桁が上かもしれません。それだけのカネを動かしていると、仮に現金で動かしていたとしても、アメリカの諜報機関の網にある程度は掛かっているのではないかと思うのです。今日のエントリーは邪推の塊ですけども、多分、アメリカはある程度「誰が出しているか」を証拠付きで知っていると思います。


 手が付けにくい世界ですけどね。特に今、アメリカとサウジの関係が良くない中、そんなものをオバマ大統領がサウジのアブダッラー国王に提起すればガラガラと中東秩序が崩壊するような気もします。個人的には「止めてくれよ、ホントに。」と思いますけど。