【以下はFBに書いたものを加筆して転記しています。】


 インド総選挙で、BJPが大勝し、単独過半数です。逆に与党国民会議派は大敗、最近は汚職ネタが多すぎました。近年のインド経済のインフレ率の高さも、国民会議派には相当なマイナスになっています。


 モディ新首相は、西部グジャラート出身ですね。工業の盛んな地域で、日本企業の進出意欲が強い地域です。州首相時代、モディ新首相は訪日を何度かしており、日本との関係はある程度出来ています。グジャラート州には「マルチ・スズキ」を中心とする日系企業用の工業団地も整備されているようで、かなり将来性があるでしょう。


 モディ新首相は、2002年のグジャラート暴動の際、1000人を超えるイスラム教徒虐殺を看過した(ここは色々な説があります)ことで欧米からはかなり冷たく見られています。当時、アメリカへの外交査証が拒否され、元々所持していた観光査証も取り消されたそうです。アメリカと再度接点が出来たのは、(どうも選挙に勝ちそうなことが明らかになってきた)比較的最近です。しかも、パウエル駐インド・アメリカ大使は今月職を辞しますが、モディ新首相を嫌ってではないかとBBCで報じられていました。


 なお、グジャラート暴動については、インド映画「Firaaq(別離)」(2008年)を私は見たことがあります。偶然、DVDを持っていたため見たのですが、グジャラート暴動の直後の人間模様が上手く描かれています。ストーリーはここ が詳しいです。ナスルッディン・シャーの名演が光ります(日本で流行った映画で言うと「モンスーン・ウェディング」に出ていた方です。)。


 世界の結構多くの映画祭で賞を取っている名作でして、こういう見られ方をしている事件で責任を問われている人であり、この見方が結構欧米で受け入れられているという意味で、外交関係者も見ておくといいでしょう(英語字幕付きの画像はココ )。最近では、昨年公開の「Kai Po Che」が良いらしいです。インド新首相と欧米との微妙な関係を知るには、こういう映画がとても有効です。


 そんな中、モディ新首相の最初の外国訪問を日本で調整との報道を見ました。多分、前インド大使の斎木外務事務次官の役割が大きいような気がします。最近の対インド外交の積極性は、斎木次官がかなり牽引しているはずです(逆に対イスラム圏外交が少し弱い印象があります。)。


 欧米との間ではグジャラート暴動に端を発したイスラム教徒人権問題が氷解していません。モディ新首相に祝意を伝えるのすら、各国あれこれ悩んでいるようでした。そういう中、日本が上手く入り込んでいるなという感じです。日本は2012年にもグジャラート州首相として、モディ氏を招待しています(2007年の第一次安倍内閣時代も訪日して、安倍総理と会っているようです。)。当時の斎木大使がこういう事態を見越していたかどうかは分かりませんが、結果からすると、蒔いた種が芽吹いています。


 人事を上手く成果に繋げることについては、なかなか今の政権は上手いです。以前書きましたが、岡村アフリカ部長(元コートジボアール大使)とウアタラ・コートジボアール大統領の人間関係が活きた、安倍さんのアフリカ訪問とかもありました。うちにもこういう知恵が欲しかったですけどね。


 ちなみにこんな記事 までありました、良いのか、悪いのかは分かりませんが、珍しいことです。他にも、インドの報道でモディ信首相と安倍さんをなぞらえる記事は少なくないですね。「nationalistic」という言葉が大体くっついています。