NHKのクローズアップ現代で「極点社会~新たな人口減少クライシス~」という番組 をやっていました。色々と最近批判されることの多いNHKですが、このクローズアップ現代はいつも良い視点で取り組んでいます。


 今回の番組のポイントは、(1) 高齢者「すら」減り始めている市町村がとても増えてきている、(2) 若年女性が(合計特殊出生率が統計的に低い)首都圏に移ってきている、ということでした。


 (1)については、日々地元北九州で地域回りをしている私が痛感しているところです。高齢者が増えているのではなく、そもそも、高齢者を含めた人口が減少している地域が、政令指定都市である我が北九州市でも増えてきています。首都圏にいる方にはピンと来ないかもしれませんが、「空き家の多さ」にほぼ毎日打ちひしがれる気持ちです。


 なお、空き家については、私は色々な理由があると思いますが、2つの問題点があると思っています。まずは相続の問題でして、日本では遺言がない限り法定相続で権利者が拡散していきます。一定の時が過ぎると何処に法定相続者がいるかを追跡できないことが多いと、ある行政書士の方から聞かされました。その行政書士の方は「一人はアメリカ在住で手続きに非常に時間が掛かった。」とのことでした。空き家に何らかの処理をしようとしたら、法定相続者のすべての方のハンコが必要となる現状では着手しにくいことが多いということです。


 もう一つは固定資産税。今の日本の制度では土地に家屋が建っていると税が軽減されます。これは人口増加の時代に、土地の有効活用という観点からそういう制度になったのだと理解していますが、人口減少社会に入って、今度は「空き家をそのままにしておく方が税制上有利。家屋の解体にカネが掛かった上に増税になる、というところに全くメリットを感じない。」という逆ギアが入っていると見るべきです。


 (2)については、首都圏の方が様々な可能性、アミューズメントが多いといった理由があるのだと思います。一方で、東京では待機児童が多いという問題があります。番組でも新宿区では合計特殊出生率が1を割っていることが紹介されていました。


 ともかく「人口が減ること」の圧力は、日本の経済、社会保障に重く圧し掛かっています。どんな経済政策を打とうとも、人口が減っている中では限界があります。これは政治の責任でもありまして、私が記憶している限り、私が大学にいた1990年代前半に人口減少の問題を声高に訴えていたのは公明党くらいでした(とても先見の明がある政党だと思います。)。


 この「壊死する地方(増田元総務相の文藝春秋での記事名)」をどう考えるかですが、勿論、魔法のステッキのような名案はありません。


 これまで何度かブログに書きましたが、「自然増」で人口増加を目指すことは現在の人口構造からは無理です。私の世代は18歳人口が200万人を超えていましたが、今は120万くらいです。これで人口を維持しようとすると、合計特殊出生率は(フラットな状態であれば人口維持に必要とされる)2.06ではなくて、それよりも遥かに多い合計特殊出生率を実現しないとダメですが、今の1.4前後の状態からひとっ飛びにそこに行くことは出来ません。


 人口が増えるのは「自然増」か「社会増」しかありません。「自然増」だけで難しいのであれば「社会増」を考えなくてはなりません。つまりは日本の外から入ってくる方を増やすしかないのです。それを労働力と呼ぶか、移民と呼ぶかは自由です。


 勿論、日本の外から入ってくる方を増やせば、今の地方の問題が解決するのかと言えば、直接の因果関係を見出すことは出来ないでしょう。そういう方は第一義的には都市圏に集まるからです。ただ、日本全体の人口がある程度維持できてくれば間接的な波及効果は期待できるかもしれません。


 ともかく、思想とか信条とかいうことは脇に置いて、今の人口減少という現象を逆転させなければ日本はとんでもないことになります。人口が減ってもいい、かつての明治時代くらいの人口でいいではないかという気持ちは理解したいですが、それだと今の人口構造では、これから40-50年くらいは地獄を見ます。税負担は青天井、社会保障は大幅カットということを覚悟しない限りは無理でしょう。逆に我々団塊ジュニアの世代が加齢によりこの世からいなくなればとてもフラットな社会になるでしょう。


 中長期的な経済対策と呼べるものは、私は一つに集約すると思います。それは「人口問題」です。これから日本が経験するかもしれない危機の大半は人口問題から来るものです。