福岡県選出の参議院議員、大久保勉さんがビットコインについて質問主意書を出して、答弁が出ていました。(質問答弁 )。この主意書自体は、マウントゴックス社の破綻の前に提出されたものでして、とても先見の明のある取組だろうと思います。民主党議員が放った最近の質問の中で、とても光るものです。普段よくお会いする方ですけど、この金融の分野については卓越した知識を持っている方です。


 私は、正直なところ、このビットコインについてよく分かっていないところがたくさんあるのですが、質問主意書答弁から見えてくるところを少し書いてみたいと思います。専門でない分野なので、間違っていたらすいません。


 まず、一番最初に思ったのが、「つまりは法律の隙間に落ちていて、何処の役所が所掌かすらよく分からないということなんだな。」ということです。金融庁、財務省、経済産業省、法務省、警察庁辺りで、消極的権限争い(押し付け合い)をしたのだろうなということが何となく分かります。麻生財務・金融担当大臣が、極めて距離を置いた立場から「こんなものは上手く行かないと思っていた」的な発言をしていたのも、恐らく担当は財務省でも、金融庁でもないのだ、という意思の表れだと思います。


 まず、これは法的には「通貨」ではないということが答弁の中にあります。また、権利の表象でもないので、その取引は銀行法の対象でもないし、金商法上の有価証券の取引でもない、となっています。銀行が取り扱うことが出来る業務に、ビットコイン取引は入らないということも書いてあります。しかし、債務の弁済には使っても構わないとなっています。


 その取引の課税については、所得税法、法人税法、消費税法の要件を満たせば、課税対象になるということで、要件を満たしているかどうかについては何も言っていません。恐らく、ビットコインがモノなのか、何なのかということについて、まだお役所の中で統一した見解を纏めるに至っていないということでしょう。


 ビットコインを投資対象とするファンドを組成出来るかについては、何となく出来るんだろうなという感じです。


 あとは逃げの答弁が多いですね。ビットコインは、マネーロンダリングや麻薬取引に使われていると言われている中、特にこういう犯罪対応の所が非常に腰が引けたものになっています。それは現時点で野放しであることを意味しており、対応の遅れがとても懸念されます。


 ともかく、答弁全体から「よく分からない」、「法律の隙間に落ち込んでいる」、「すべての役所がうちの所掌ではないと逃げている」ということが読みとれます。この状態は良くないですね。内閣官房の方できちんと担当を決めて、ビットコインに対する対応をすべきです。


 私の認識では、ビットコインというのは「通貨とは何か」という根源的な問題を提起していると思います。現代では、国家がその価値を保証し、強制通用力があるものが通貨とされています。ビットコインがそういうものでないことは明らかです。


 原始社会では、「価値があると皆が思っているから価値がある」という状態で存在していた貨幣がありました。ある南方の島で、動かすことすらできない巨大な石が通貨として価値があると島民すべてが思っていて、それが何かのきっかけに海に落ちてしまったら、島民は大きな価値物がなくなったと狼狽し、経済が混乱し、その後、その石をもう一回海から救いあげたら島民は安心して平時に戻った、という話を読んだことがあります。ビットコインの仕組みを聞いて、似たようなことを思いました。何らの価値的保証がなく、取引に携わっている人間が皆で「これは価値がある」と思っているから成立しているだけなのでしょう。本当に「うたかた」の世界だなと思います。


 先日、大久保議員と話していて、一番(門外漢の)私的にピタッと来たのは「骨董品」と類似しているという論でした。価値を誰かが保証しているわけではなく、「価値があると思えば価値があるし、ないと思えばない」ということで、似ているかもしれません。


 ただ、骨董品と違うのは、有体物ではない(しかも、権利の表象でもない)ということでして、そうすると、最終的には、「単なる電磁的記録」としか言いようがないような気もします。そうなると、ビットコインに関する諸犯罪は単なる「電磁的記録不正作出及び供用の罪(文書偽造の特殊類型)」でしかないのかな、という気もします(この部分は確実に適用可能でしょう。)。逆にビットコインを有体物と見なせば窃盗罪とかも成立するのかもしれません。その時、モノの取引として消費税が掛かるのかといった論点もあります。


 それにしても、答弁を見ていて不安になりました。不勉強な私でも、これが麻薬取引やマネーロンダリングに使えそうだということは分かります。である以上、繰り返しになりますけど、早急に消極的権限争いを排して、明確な方針を出してほしいと思うばかりです。