【以下はFBに書いたものを加筆して転記しています。】


 与党が、内閣府の所掌見直しをするという報道がありました。全くもって正しいアプローチです。


 内閣府というのは、元々が旧経企庁、沖縄開発庁、総理府等の役所を一緒にして作ったものですので、これ程得体のしれない組織もありません。ココ を見ていただければ分かりますし、内閣府設置法の任務を見ると、「つまり何なのだ、この組織は。」ということにお気づきいただけるでしょう。


【内閣府設置法第三条(任務)】
1 内閣府は、内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とする。
2 前項に定めるもののほか、内閣府は、皇室、栄典及び公式制度に関する事務その他の国として行うべき事務の適切な遂行、男女共同参画社会の形成の促進、市民活動の促進、沖縄の振興及び開発、北方領土問題の解決の促進、災害からの国民の保護、事業者間の公正かつ自由な競争の促進、国の治安の確保、金融の適切な機能の確保、消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に向けた施策の推進、政府の施策の実施を支援するための基盤の整備並びに経済その他の広範な分野に関係する施策に関する政府全体の見地からの関係行政機関の連携の確保を図るとともに、内閣総理大臣が政府全体の見地から管理することがふさわしい行政事務の円滑な遂行を図ることを任務とする。
3 内閣府は、第一項の任務を遂行するに当たり、内閣官房を助けるものとする。


 より細かく知りたい方は、この法律 の第四条(所掌事務)を読んでみてください。途中で読んでいくのが嫌になるはずです(しかし、この第四条の規定の一つ一つに権限が込められています。)。しかも、内閣府は、これらの任務からは直接には読みとれないことも実質的にやっています。


 更には、内閣府特命担当大臣というのは、実は法律には出て来ません。厳密に言うと、内閣府特命担当大臣は、内閣府の所掌事務を分掌しているわけではありません。したがって、内閣府の大臣が権限を行使する際は、特命担当大臣ではなく、内閣府の長としての内閣総理大臣です。なので、内閣府関係の案件を閣議に上げる際は、内閣府の長としての内閣総理大臣から、内閣の長たる内閣総理大臣に対して当てられます。差出人と受取人が同じ人間であるということになります。


 私は現職時代、消費者安全法の一部改正の際、この点を質問したことがあります。消費者安全関係で是正勧告等の権限行使をしようとすると、それはすべて内閣府の長としての総理大臣からやらなくてはなりません。そういう時に、行政機関として「是正勧告出したいけど、総理からやらせるかね。」という萎縮効果が働くのではないか、と指摘しました。答弁は「総理から言われる可能性があるということ自体が抑止効果になる。」ということでしたけど、内閣府にはそういう問題がいつも付きまといます。


 あと、実は内閣官房も無茶苦茶です。総理を直接補助する機関として存在していますが、そういう機関にこれだけの機能 を持たせるというのは異常です。


 根拠規定は、内閣法第12条です。


【内閣法第12条】

1  内閣に、内閣官房を置く。
2  内閣官房は、次に掲げる事務をつかさどる。
一  閣議事項の整理その他内閣の庶務
二  内閣の重要政策に関する基本的な方針に関する企画及び立案並びに総合調整に関する事務
三  閣議に係る重要事項に関する企画及び立案並びに総合調整に関する事務
四  行政各部の施策の統一を図るために必要となる企画及び立案並びに総合調整に関する事務
五  前三号に掲げるもののほか、行政各部の施策に関するその統一保持上必要な企画及び立案並びに総合調整に関する事務
六  内閣の重要政策に関する情報の収集調査に関する事務

 これですと、たしかに何でも盛り込めてしまいますが、上記でリンクを張った表を見ていると、本当にこれは総理の側に置いておかなくてはいけないのかと思うような機能が結構あると思います。


 不謹慎な言い方なのかもしれませんが、時折、内閣府や内閣官房が「誰もやりたがらない仕事を、総合調整の美名の下に押しつけるための場所」になっているような気がしてなりません。


 内閣府については、法改正の上、所掌事項をスリム化することに加え、そもそも、今の内閣府という組織のあり方(上記のような大臣の位置付け)にも踏み込んでほしいと思います。内閣官房については、法改正はないと思いますけども、本当に総理大臣を補佐する機関に必要なものは何かという議論から再整理をしてほしいところです。


 これは消極的権限争いの世界でして、各役所が受けたがらないものをすべて上に押しつけていているわけですから、それをまた戻すとなると、結構各役所が抵抗します。それを押さえつけて「やれ。何でもかんでも内閣府や内閣官房に持ってくるな。」と言えるのは政治だけです。政治の側が、消極的権限争いを抑え込む気概がないと、結局、肥大化した組織は肥大化したままになります。