東京オリンピックに伴う建設需要等に対応するため、「技能実習生」を活用する方向で政府が検討に入ったという報道がありました。技能実習生については、何度かこのブログでも書きましたが、制度自体はこういう感じ です。


 これ、とても矛盾があるのです。上記のリンクの表現を使いながら、もう一度書いてみると「東京オリンピックに伴う建設需要等に対応するため、(途上国の)技能実習生へ技能等の移転を図り、その国の経済発展を担う人材育成を行います。」と言っているのです。全く意味が通じません。


 単刀直入に言えば、恐らく求めているのは単純労働者でしょう。そして、日本は単純労働者の受け入れをやりませんから、裏技として「技能実習生」という肩書でやっているだけです。いつまでこんな欺瞞に満ちた制度を維持しているのかと思います。


 この技能実習生制度は、以下の2タイプがあります。


(1) 企業単独型:本邦の企業等(実習実施機関)が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施
(2) 団体監理型:商工会や中小企業団体等営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施機関)で技能実習を実施


 私は(1)は良いと思うのです。正に技能実習生です。しかし、(2)については怪しいものがたくさんあります。やり方は比較的簡単でして、協同組合や中小企業団体を作ればいいのです。そして、その協同組合等が一旦受け入れるかたちを取れば技能実習生を受け入れることが出来ます。そういう団体の中には、「労働者コスト削減のためにうちの協同組合に入りませんか」と堂々と宣伝しているところもあります。そもそも、制度の本義は労働者コスト削減のはずもありませんが、それが黙認されているのが現状です(本当に技術の移転が主であれば、むしろコスト増要因のはずです。)。


 しかも、制度が複雑なため、それを仕切るJITCOという組織に賛助金を払ってコンサルをしてもらわないと、実質的には研修生を受け入れることが出来ないようになっています。


 その実は単純労働者的な雇用をしているところが非常に多いのです。ちょっと前に、広島のカキ打ち現場で研修生が社長を惨殺する事件がありました。知り合いの漁業関係者に聞いてみると、「本国(中国)に帰ってから、カキ打ちをすることは到底想定されない。」ということでした。私もそう思います。


 私は、この技能実習制度は(1)の企業単独型に限定して、それ以外の実質的な単純労働者については、現実を真正面から受け止めて「単純労働者の受け入れ」という制度に変えていくべきだと思います。それによって、現実が大きく何か変わるわけではないでしょうが、研修生という美辞麗句に糊塗された制度にはとても無理があります。2011年までは、(労働者ではない)研修生ということで労働法制すら適用されておらず、現代版蟹工船みたいな世界が問題になっていました。


 「単純労働者の受け入れ」という大きなステップを踏み出すことには勇気が要ります。しかし、人口減少社会ですし、人手が足らない分野が出てくるのであれば、そういう選択をすべき時に来ているのではないかと思います。