アフリカの大使館に防衛駐在官を増やすとの報道がありました。現在の配属はエジプト、スーダンですが、これに加え、新規の配属先はモロッコ、アルジェリア、ジブチ、エチオピア、ケニア、ナイジェリア、南アフリカとなるそうです。それぞれに理由がある国です。個人的には、私が在勤していた西アフリカが弱いかなと思いますけども、増やすことは大事な一歩です。


 まず、国連安保理の議題のかなりのものはアフリカ関係です。紛争国でPKOをどうするか等の判断をする際は絶対にプロの眼が必要です。私が現地でPKOの機能強化関係の会議に行ったことがありましたけども、正直、専門用語(特に略語)が多くて難儀しました。装備を見てもよく分かりませんし、説明を咀嚼するだけで精一杯でした。


 また、防衛駐在官を配属する重要なポイントとして、その国の軍人、更には他国の武官との間には背広組が入れない特別な世界があります。情報収集するに際しても、やはり同じ制服組でないと話さないことがあります。この特別な世界を感じたのは、知り合った直後からお互いが親称で話し合っているのを見た時でした。形容が正しくないかもしれませんが、「あなたと私」で話すのではなく、「オレとおまえ」みたいなものだと思っていただければいいです。アフリカ在勤時、何度かフランス大使館の武官に会いに行きましたが、どうも波長が合いませんでした。


 あと、些細なことだと思われるかもしれませんが、駐在国の国祭日みたいな機会には大使の傍にバシッと制服を着た方がいるととても様になります(というか、基本的には大使と防衛駐在官しか呼ばれないのです。)。駐フランス日本大使館は空自の防衛駐在官ポストですが、記念日に大使と防衛駐在官が並んでいるのを見て、祖国日本を思ったものです。これはもっと敷衍すると、日本の総理が外国で栄誉礼を受ける際、その同行はその国に派遣されている防衛駐在官が対応しますが、そういう時に、その国に防衛駐在官がいないとちょっと面倒です(もっと行けば、天皇陛下や総理の傍に常日頃から副官を置くべきという議論になります。)。


 ところで、この防衛駐在官の配属については改善した方がいいのではないかなと思うことがあります。それは「ランク」の問題です。例えば、在米日本大使館には将補(少将相当)の方が派遣されていますが、なんとランクは「参事官」です。参事官というランクを説明するのは難しいですけど、例えば、私が今外務省に残っていて大使館に派遣されればランクは参事官です。将補であれば、もう一つ上の「公使」ポストが妥当な線です(1佐(大佐相当)も、今は一等書記官ですが、私の感覚的には参事官です。)。何故か、防衛駐在官は在外に出ると全体としてランクを下げられるのです。ランクが下がると先方から会う相手を下げられる恐れがあります。


 もう一つ、重要なポイントとして「定員」の問題があります。よく外務省が批判されることとして、防衛駐在官ポストを作ると、対価として防衛省への出向ポストを要求されるとして、自衛隊関係者には「座布団」と呼ばれ評判が悪いです(防衛駐在官ポストの対価に、外務省関係者にポストを出さなくてはならないということで、その席のことを「座布団」と呼んでいます。)。


 これはなかなか難しくて、大使館に派遣されると外務省職員の扱いになります。ここがポイントでして、今、公務員の定員が厳しい中、防衛駐在官ポストを1つ作ると、外務省職員のポストが一つ削らざるを得ないのです。そうすると、どうしても省庁間で対価を求めざるを得ないということになります。そうでないようにするためには、新規に配属される防衛駐在官ポストを純増として定員配置しないとダメなのです。今回は政治主導で配属が決まっていくわけでして、「座布団」をめぐる余計なゴタゴタを起こさないためには、これらの7つの新規ポストを「純増」とするように、政治は(公務員の定数管理をしている)総務省行政管理局と話をするところまで目配りをしなくてはなりません。


 ということで、単に「防衛駐在官を増やす」のみならず、ランクや定員のところまで踏み込んで、この件はコンプリートです。そこまでの配慮、今の政権に求めたいところです。